ゴールドマン・サックス VS ウォール街占拠 グレッグ・パラストが調査

2011/10/25(Tue)
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13分

ウォール街きっての有力銀行ゴールドマン・サックスが、ニューヨークの零細信用組合の募金イベントに脅しをかけたという事件。その裏には、受け取った公的救済資金を悪用して零細金融機関に圧力をかけようとするゴールドマンの悪巧みが・・・
ウォール街占拠の現場近くにあるローワー・イーストサイド・ピープルズ連邦信用組合(Lower East Side People’s Federal Credit Union)は、地元のラティーノ層が利用する小口金融機関です。大銀行から拒絶された公営住宅の住民や小さな商店の経営者が口座を開ける非営利の金融機関で、大手銀行の支店が地域から撤退してしまったときに抗議して集まった住民たちが自分たちで立ち上げた信用組合です。ニューヨークの低所得層を受け入れて立派な業績を上げ、全国的にもモデル視されるような銀行でした。ウォール街占拠のなかから出てきた「大銀行の預金は解約し、地元住民のための銀行に口座を移そう」というスローガンに対しても、いち早く支持を表明し、募金パーティーを開いて政治的な立場を鮮明にしました。

そこに圧力をかけてきたのがゴールドマン・サックスです。LESピープルズ連邦信用組合に対しウォール街占拠への支持を取り下げないと、5000ドルの寄付を取り消すと脅迫したのです。でも、そもそもどうしてGSが信用組合に寄付をしていたのでしょう?パラスト記者の報告によると、これは2008年のリーマン・ショック後にゴールドマン・サックスが一夜にして投資銀行から商業銀行に変身し、おかげで100億ドルの公的救済を受け取ることができたという、それ自体がスキャンダルのような出来事に関係しています。その際に受け取った100億ドルの一部を地元の貧困層に再投資することが法律で義務付けられていたのですが、そんな貸付をするための窓口を持たないゴールドマンは、LESピープルズ銀行のような零細信用組合に寄付することによって振り替えていたのです。だとすれば、それは寄付ではなく、貧困層に貸し出すことを義務付けられた公的資金です。それなのに、いまやこの資金はゴールドマンによる零細信用組合支配の道具に使われています。
 
いつも歯切れよく鋭い報道のパラスト記者。なんと元はフリードマンの門下生だったそうで、今回は少々プライベートな部分ものぞかせています。(中野真紀子)

*グレッグ・パラスト(Greg Palast) BBCの調査報道ジャーナリスト 『金で買えるアメリカ民主主義』の著者。新著はVultures’ Picnic: In Pursuit of Petroleum Pigs, Power Pirates, and High-Finance Carnivores(『ハゲタカ天国 石油太りの豚とローン肉食獣』)。

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字幕翻訳:桜井まり子/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗