黒人の自由を求める運動の肉声を記録したパシフィカアーカイブ
独立放送局の草分け、パシフィカ・ラジオ。そのアーカイブには5万5千本もの録音テープが収蔵されています。主要メディアが見向きもしなかった活動家や思想的指導者をいちはやく取材し、市民の運動、なかでも公民権運動を盛り上げるのに貴重な役割を果たしたパシフィカですが、録音テープの劣化が危ぶまれています。その記録に一番身近に接する機会をもつパシフィカ・ラジオ・アーカイブの責任者のブライアン・デシャザーは、その価値がわかるだけに、なんとかデジタル化を進めて保存してアクセスを容易にし、研究や運動に活かしてほしいと意欲的です。
シティライツ・ブックスとパシフィカとの共同企画、Redefining Black Power(『ブラックパワー再考』)も、そんな取組みのひとつ。公民権運動を歴史の流れの中でとらえ、現代とつなげます。その出版を記念して企画されたこのセグメントでは、出版に向けて実施されたビンセント・ハーディング(キング牧師と活動を共にし、歴史に残る反戦スピーチ「ベトナムを超えて」の草稿を書いた)のインタビューに合わせて、パシフィカ・ラジオ・アーカイブから、貴重な録音ふたつが紹介されます。
番組はまず、ファニー・ルー・ヘイマーのロング・インタビューで始まります。1962年、45歳のヘイマーはミシシッピ州の貧しい小作農の妻でしたが、SNCC(学生非暴力協調委員会)の若者たちによる黒人の投票権獲得運動に共鳴し、大きな貢献をしました。生命の危険にさらされ続けた彼女が、当時の闘いをまざまざと語っています。
もうひとつの嬉しい肉声は、ジェイムズ・ボールドウィン。高名な作家で公民権運動にも深く関わった彼が、1963年、4人の少女の命を奪ったバーミンガムの黒人教会爆破事件の直後に、怒りをおさえながら、アメリカよ、おとなになれと訴えます。
(大竹秀子)
*ジョアン・グリフィス(Joanne Griffith): 放送ジャーナリスト。BBC放送や米国公共ラジオ放送(NPR)で世界各地のアフリカ系ダイアスポラの諸問題に関する報道を行っている。Redefining Black Power(『ブラックパワー再考』)の編集に携わった。
*ブライアン・デシャザー(Brian DeShazor): パシフィカ・ラジオ・アーカイブの責任者
字幕翻訳:川添峡子/校正:大竹秀子/Web作成:桜井まり子