『帝国の収穫』 フアン・ゴンザレスが詳細に描く米国ラティーノの歴史

2011/5/25(Wed)
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フアン・ゴンザレスが著書Harvest of Empire: A History of Latinos in America(『帝国の収穫:米国のラティーノの歴史』)の全面改訂を記念し、米国のラティーノ系移民の歴史を語ります。ゴンザレスによると、2050年には米国に住む人の3人に1人がラティーノ系になると予想されています。1960年から2008年まで合法非合法合わせて4千万人を超える移民が米国に流入、その半数がラティーノ系だと言います。

移民と言いますがその定義は時代によってさまざまで、いわば「米国市民と定義されない者」のようです。初期の移民法として知られる1790 年のThe Naturalization Act (帰化法)は、米国市民になることのできる移民の要件を、「品行方正」な「自由身分の白人」(free white persons)と定め、非白人や年季奉公の者を明白に排除していました。いっぽう米国はルイジアナ買収、米墨戦争でメキシコの3分の1を獲得するなど拡大政策を取る帝国でもありました。米国は、国境の拡大にともなう住民の受け入れと外国からの移住者の両方に対処できる移民法を作り続けて来たといえるのです。

20世紀の大きな改正となった1965年の移民法 は公民権運動の高まりを反映し、それまで細かく制限されていた国別の移民数を廃止しました。しかしそれはアジアと中南米からの移民の急増を招くことになりました。移民政策は1979年以降、9回の改革 がなされていますが中南米からの移民の制限が中心となっているといえます。オバマ政権下では100万人の無届移民が強制送還されています。

ゴンザレスは、米国にとって移民は「帝国の収穫」だと言います。米国という帝国は移民を必要としているのであり、移民はその要求に応えているのだと。恒久的に低賃金労働を支えているのは主にメキシコからの移民です。アリゾナ州の過激な移民排斥法やメキシコ国境の軍事化、ひいては無届移民の世帯に生まれた若者を軍隊にリクルートしようというドリーム法に至るまで、米国の移民政策は常に時代の要求に大きく影響されながらも、特権層の利益を守るという目的は一貫しているようです。(桜井まり子)

*フアン・ゴンザレス(uan Gonzalez) デモクラシー・ナウ!の共同司会者、ニューヨーク・デイリー・ニューズ紙のコラムニストHarvest of Empire: A History of Latinos in America(『帝国の収穫:米国のラティーノの歴史)の改訂版が5月に出版された。

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字幕翻訳:川上奈緒子/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗