チェルノブイリの大惨事:世界最悪の原発事故から25周年

2011/4/26(Tue)
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23分

今日4月26日はチェルノブイリ原子力発電所の事故が起きた日です。ちょうど一年前のチェルノブイリ事故25周年の検証番組をお届けします。当初ソ連当局は事故を隠蔽しようとしましたが、結局はチェルノブイリ周辺の5万人の住民を強制避難させることになりました。2004年にアカデミー賞最優秀短編映画賞を受賞したディレオ監督のドキュメンタリー映画「チェルノブイリ・ハート」が示すように近隣地区で生まれた子供にはいまも先天性の異常が多発しています。

長期的にみたチェルノブイリ事故の影響による死者数には推計によって大きな開きがあり、IAEA推計では約4000人ですが、ニューヨーク科学アカデミーが2009年に掲載したアレクセイ・ヤブロコフらロシア人科学者の研究では100万人にのぼります(チェルノブイリ被害実態レポート翻訳プロジェクト)。ヤブロコフらのレポートを翻訳した薬物学専門家のジャネット・シャーマンは、内部被曝の危険性については今の段階でも確実なことを述べるのは難しいといいます。福島発電所はもとより、チェルノブイリの事故でさえいまだに完全に収束してはいないからです。事態の収束が見えないまま住民は繰り返し被曝しており、最終的な影響が現れてくるのは私たちの子供や孫の世代なのです。

チェルノブイリ事故の2年後に現場を視察したパターソン医師は、核エネルギー利用にまつわる有害な3P(Pollution:汚染、Price:価格、Proliferation:拡散)を挙げます。パターソンは各地に建設された原子力発電所が事故を起こした場合、周辺のどの地域までが避難区域になるかという地図を公開していますが、いったん事故が起これば世界のどこに住んでいようが無関係な人などいないと強調します。

4半世紀が経ち、事故を起こした責任主体であるソビエト連邦はもう存在しません。被害を受けた住民たちへのケアはウクライナ、ベラルーシ、ロシアという別々の新生国家が継承することになりましたが、原子炉を閉じ込めた「石棺」は崩れかけており、今も放射能が漏れ続け、資金調達もままならぬ当局にはもはや手の施しようがない状態です。国策として進められた原子力発電ですが、責任を持つはずの国家は永遠のものではないし、放射能被曝の環境が沈静化するまでに必要な何百年という歳月に比べれば、国家の寿命などはかないものです。「国が責任を持つ」なんて軽々しく言えることではないでしょう。(中野真紀子)

*ジェフ・パターソン(Dr. Jeff Patterson)「社会的責任を果たすための医師団」(Physicians for Social Responsibility)の前事務局長でチェルノブイリ事故現場を訪問したことがある。同団体は、Nuclear Reactor Accident Evacuation Zone Mapping Tool(米国各地の原子炉で事故が起きた際に退避を迫られる地域の範囲を地図で視覚化したもの)の新版を出したところ

*ジャネット・シャーマン(Dr. Janette Sherman,)内服薬と毒物学の専門家。Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and Nature(『チェルノブイリ 大災害の人間と自然に対する影響』)の編集者で、最新記事は"Chernobyl, 25 Years Later"(「チェルノブイリ 25年」)

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字幕翻訳:加藤麻子/全体監修:中野真紀子/ウェブ作成:中森圭二郎