ラジ・パテル:モザンビークの食糧暴動に見える地球温暖化の真の姿

2010/9/8(Wed)
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アフリカのモザンビークでは、パン価格の3割引き上げに住民の怒りが爆発し3日間にわたる抗議行動で13人が死亡、数百人が負傷する事態になりました。値上げは小麦の国際価格が60%以上も高騰したためでした。2年前にも基礎食品の価格高騰で世界各地に怒りの抗議デモが広がりました。ド・スキュテール国連特別報告官は2008年の世界食糧危機の経験に学ばず、食料安全保障を怠ってきた各国の対応に警告を発しています。国連食糧農業機関(FAO)は、原因は食糧危機ではなく市場の混乱だと発表しています。『肥満と飢餓』の著者、ラジ・パテル氏は、自然災害が農業生産に及ぼす悪影響を、人間が作ったシステムが何十倍にも増幅し、社会的に与える被害を大きくしているのだと言います。

FAOの予想では、2010年の小麦は史上3番目の大豊作ですが、世界の飢餓人口も過去最大に達しています(2009年の推定で10億人)。2008年の食糧危機の後、さらに数億人が飢餓に陥りました。その後に世界金融危機が起こり、貧困層が拡大したためです。問題は食糧の不足ではなく、食糧を買う金がないことです。2008年当時も、局地的な災害の影響はありましたが全体の収穫高は決して悪くなかったのです。気候変動の影響で干ばつや洪水の被害も増大していますが、森林伐採や誤った開発政策、農業への投資の不足などの人為的な要因が、自然が引き起こす影響をさらに拡大します。

それに加えて事態を悪化させるのが金融投機です。2008年の食糧危機も穀物市場への大量の投機資金の流入が極端な価格高騰を引き起こしたために起きたものでした。現在進行しているのは、政府や企業が外国の農地を買いあさる「土地争奪」です。外国人投資家による土地の買い占めは、地元社会に大きな悪影響を及ぼしています。(中野)

ラジ・パテル(Raj Patel)
米国カリフォルニア州在住の食糧政策アナリスト、活動家。『肥満と飢餓――世界フード・ビジネスの不幸のシステム』(作品社)の著者

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字幕翻訳:川上奈緒子/校正:永井愛弓
全体監修:中野真紀子/サイト:付天斉