サウジのバンダル王子がシリア反政府勢力を支援 1980年代の再現か

2013/9/6(Fri)
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シリア騒乱が2011年に始まってから、もうすぐ3年になろうとしています。騒乱が長引くにつれて国際社会からの非難は高まり、最近では他国の軍事介入の是非をめぐって、国連内でも激しく意見が対立しています。シリア関連の記事が新聞のトップニュースに見られる日も少なくありませんが、騒乱への国際社会の関与について、今回また新たな側面が暴露されました。

ゲストのアダム・エントゥス記者が執筆したウォールストリート・ジャーナル紙の記事によると、サウジアラビアと米国、またヨルダンを含む同盟国の諜報機関は共同作戦を実行し、ヨルダンにある秘密センターでシリアの反政府勢力を訓練して、武器を与えていたということです。もちろんその目的は、アサド政権の弱体化です。同作戦の計画および遂行の鍵を握る人物が、サウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン・アル=サウード王子、通称バンダル王子です。

バンダル王子は駐米大使を22年にわたって務めたサウード王家の一員で、特にブッシュ家との関係が深かったことから、「バンダル・ブッシュ」の異名をとりました。もともとそのコネや財力には定評があったバンダル王子は、2012年にサウジアラビアの諜報機関のトップに任命されて以来、シリア情勢に積極的に関与し始めたということです。

共同作戦の詳細は、サウジアラビアやカタールやトルコ、また米国などの国々が協力して、ヨルダンに秘密の作戦基地を構え、そこで兵器を搬入したり、シリア軍の脱退者や反政府勢力のメンバーに軍事訓練を行っているというものです。アサド政権の弱体の他にも、様々な援助を通じて今後自国に有利に働く忠誠心を植えつけたい、という同盟国の本音も見え隠れします。

ここで注目すべき点は、バンダル王子とCIAは、1980年代にもこれと非常に良く似たシナリオに沿って行動していたという事実です。当時の米政権は、CIAがソ連軍に対抗する反政府ゲリラ(ムジャヒディーン)を支援することを命じ、その後数年にわたってCIAは、資金や武器、また医薬品などを送り続けていました。また、ムジャヒディーン幹部の中には直接CIAから「給料」を受け取っていた者もいることがわかっていますが、この歴史をなぞるかのように、シリアの反政府勢力の主要人物の一部も、CIAから直接給料をもらっているようです。バンダル王子はというと、80年代のアフガニスタン紛争時にも、サウジアラビアからムジャヒディーンへの援助の実現をお膳立てしており、今回のシリア騒乱における役割もおおむねそれを踏襲していると言えるでしょう。

今では周知の事実となったように、80年代にCIAから援助を受けていたムジャヒディーンの中には、オサマ・ビンラディンの名もありました。これまでの米国とアフガニスタンとの関係、今でも混沌としているアフガニスタンの国情、またそれが中近東の情勢に及ぼしてきた影響などを考えると、今回のシリアにおいては二の舞を演じないよう願わずにいられません。(永井愛弓)

*アダム・エントゥス(Adam Entous):ウォールストリート・ジャーナル紙の安全保障問題特派員。

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字幕翻訳:中村達人 校正:永井愛弓