ソ連自壊の道を後追いする米国 「帝国の墓場」にはまる基地帝国

2010/6/18(Fri)
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アフガニスタンの戦争は10年目に入り、ベトナム戦争を超えて米国史上で最長の戦争となっています。TomDispatch.comのトム・エンゲルハートは、「米国のソビエト化」だと言います。ソ連共産党は軍事力による支配を過信してアフガニスタンを攻撃し、10年にわたる戦争にはまりこみ、財政が破綻して本国のインフラが崩れ社会そのものが崩れ始めました。1989年にほうほうの体でアフガニスタンから撤退しましたが、それから2年でソ連は崩壊しました。ソ連の自壊で米国は冷戦の勝利者になりましたが、驚くべきことにこの国はソ連がたどった道を後追いし始めたのです。

始まりはブッシュ大統領ですが、拡大したのはオバマ大統領です。議会では長引く戦争が論議され、証言に立った軍司令官たちは、2011年の撤退に向けて進んでいると戦争継続への理解を求めました。しかしアフガニスタン北部では、1億ドルの予算をかけた空軍基地の建設が始まっています。撤退にてこずっているのではなく、撤退する気が無いのだとエンゲルハートは言います。ベトナム戦争でもそうでしたが、いざ撤退となると、米軍がいなくなれば大虐殺が起こるなどという妄想が起こり、責任ある撤退という議論がおこります。同じ議論がソ連でも起こりました。ソ連も最後の数年はアフガニスタンから撤退したかったのですが、撤退後の混乱を恐れて決断できず、破滅の道をたどりました。その前には大英帝国が同じ目にあっています。アフガニスタンは「帝国の墓場」なのかもしれません。

エンゲルハートは著書『アメリカ流の戦争』で、空爆と市民の巻き添えについて語っています。近代戦において、損害の大部分を占めるのは兵士ではなく一般市民の被害です。コラテラルダメージ(付随的損害)と呼ばれる非戦闘員の巻き添えが圧倒的に多く、犠牲者の数もわかりません。米国が得意とする空爆が、一番多くの人命を奪うのです。高性能爆弾とか精密誘導とか言っても、空からの攻撃は必ず市民を巻き込み、罪のない死者を出します。

これとセットになるのが米軍基地です。世界の米軍進駐は驚くべき規模に達しており、公式のものだけで大小あわせて約700カ所もあります。これとは別に戦地の基地があり、イラクで約300カ所、アフガニスタンでも400カ所と推定され、さらに増殖中です。そのほかに、ヨルダンのように政府が公言をはばかるケースや、パキスタンのように国軍と基地を共有するケースもあり、本当の規模は1200カ所以上に達するとエンゲルハートは推測します。こんなものは歴史に前例がなく(大英帝国でも世界の基地は40カ所程度)、米国は領土支配に代えて軍事基地を配置する新形態の帝国です。
(中野)

*トム・エンゲルハート(Tom Engelhardt) ウェブサイト TomDispatchの主催者。新著はThe American Way of War: How Bush’s Wars Became Obama’s (『アメリカ流儀の戦争 ブッシュの戦争からオバマの戦争へ』)

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字幕翻訳:桜井まり子/校正・全体監修:中野真紀子