ジョン・ロス「怪物 メキシコシティの恐怖と贖い」 

2010/4/27(Tue)
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14分

詩人で活動家のジョン・ロスがメキシコを語ります。ビート・ジェネレーションの文学活動に参加していたロスは青年時代にメキシコを旅し、山中の先住民と7年間生活を共にしたり、サパティスタ運動にもかかわっていた経歴の持ち主です。1985年のメキシコ大地震に遭遇したロスは、被災住民が主体的になって救援活動を行なうのを目撃し、やがてそれが政治的な大衆運動になる様子に感銘を受けます。メキシコ・シティに移住したロスは地域に根を下ろし、住民の集会に参加してきました。そこでは多くの重要な社会問題が活発に議論され、暮らしをよくする地域運動があるといいます。

 いっぽうで、 NAFTA(北米自由貿易協定)により米国・メキシコ・カナダ間で関税が撤廃され、メキシコに米国産の安い農産物が大量に入ったためメキシコの農業は荒廃しました。NAFTA発効後10年で180万人が離農、家族を含めると約1千万人が土地を離れたとロスはいいます。「メキシコはまるで、安全弁が閉められた爆発寸前の圧力釜です」。

2010年4月、アリゾナ州で移民排斥法が通過し大きく報道されました。しかし非合法の手段に頼っても移民が米国に流入する原因を作ったのは、米国主導のNAFTAであり、レーガン政権以来の「麻薬との戦争」がメキシコの社会を疲弊させたからではないでしょうか。

このインタビューは2010年4月に収録されました。ジョン・ロスは2011年1月に亡くなり、デモクラシー・ナウ!ではこれが最後の出演となりました。(桜井)

ジョン・ロス John Ross, 独立記者、活動家、詩人。最新作はEl Monstruo: Dread and Redemption in Mexico City(『怪物 メキシコシティの恐怖と救済』)

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字幕翻訳:川上奈緒子 校正:永井愛弓 全体監修:中野真紀子 桜井まり子