スコット・リッター元国連査察官 イランの核開発問題は「政治がらみの空騒ぎ」

2009/9/29(Tue)
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ワシントンでは核サミットが開かれています。これに先立ちソ連との間に新たな核軍縮合意を結んでみせたり、「核なき世界」をめざす姿勢をアピールするオバマ大統領ですが、いまだに「イランと北朝鮮が脅威」と述べて、しっかり「悪者」を立てるのは忘れません。ブッシュ政権の時代から、くりかえし浮上してきたイランの核開発疑惑は、そのたびにイスラエルによるイラン攻撃という破滅のシナリオが宣伝され、危機が煽り立てられてきました。オバマ政権でも、これは続いています。昨年秋にはイラン中部のコム市やテヘラン近郊のウラン濃縮施設が問題化し、年末にはイランが核爆弾の起爆装置を開発中というデマも飛びました。スコット・リッター元国連武器査察官に、たびたび蒸し返される「イランの核開発疑惑」をばっさり切ってもらいましょう。
リッター氏はイランの核開発疑惑を「政治的な動機による空騒ぎ」と呼びます。オバマ政権はイランが新たに発見された核施設への査察を許可しなければ、制裁措置も辞さないと警告していますが、イラン側は平和目的で使用していると主張しています。イランは核不拡散条約の加盟国です。IAEAによる完全な査察体制の下にあり、これまで違反したこともありません。イランは施設を申告し査察官も招き入れたのに核兵器の製造だと決めつける狙いは なんなのでしょうか?
イスラエルはイランの核施設を先制攻撃する権利を主張し、米国も軍事的な選択肢を捨てていません。イランにしてみれば、原子力政策は、新エネルギーの意開発で国内需要を満たして石油やガスを輸出に回し外貨を稼ぐという重要な計画です。米国とイスラエルが爆撃すると脅すならば、予備の施設を建てたくなって当然だとリッターは言います。オバマ大統領はイランのミサイル演習が挑発的だと非難しますが、イランはどことも戦争をしておらず、攻撃的なのはむしろ米国とイスラエルの方です。イランが原子力発電用のウラン濃縮を行うのは合法ですが、イスラエルは核不拡散条約に加盟しておらず、大量の核兵器を持っているのです。(中野)

*スコット・リッター(Scott Ritter) 1991年から1998年にかけてイラクで国連武器査察官を務める。著書に『イラク戦争―元国連大量破壊兵器査察官スコット・リッターの証言 ブッシュ政権が隠したい事実』(合同出版、ウィリアム・リバーズ・ピットと共著)、Iraq Confidential(『イラクの闇』)、Target Iran(『イランを狙え』)、Dangerous Ground: America’s Failed Arms Control Policy from FDR to Obama(『危険地帯─武器管理政策 失敗の米国史』)がある。2009年9月25日付の英ガーディアン紙に、Keeping Iran Honest(イランに嘘をつかせない)という記事を発表して、イラン核疑惑の欺瞞性を非難した。

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字幕翻訳:田中泉/校正:斉木裕明
全体監修:中野真紀子・高田絵里