アメリカの急進派 I・F・ストーンの生涯とその時代

2009/6/18(Thu)
Video No.: 
1
50分

「急進派ジャーナリスト」を自称したI・F・ストーンは、20世紀アメリカを代表する調査報道ジャーナリストでした。学問的ともいえるような緻密で徹底した調査手法でスキャンダルを鋭く暴く独特のスタイルによって、アメリカの報道界に大きな影響を残しました。60年にわたる活動期間を通じて取り上げた問題は、ニューディール政策から、第2次世界大戦、マッカーシズム、冷戦世界大戦、イスラエル=パレスチナ問題、公民権運動、ベトナム戦争と多岐にわたります。

有名な自費出版の個人ジャーナル『週刊I.F.ストーン』を始めることになったきっかけは、マッカーシー時代の言論統制の中で、公的医療保険の導入を阻む医療業界のボスを果敢に批判したためマスコミから追放されたからでした。マスコミによる言論統制の結果は、先進国で唯一、今日に至るまで公的医療保険制度を持てない不幸な米国市民です。このことは、ストーンのよう急進的な言説を主流メディアから排除することが、いかに危険なことかを、よく物語っています。

たった一人で4千部から出発した『週刊I.F.ストーン』でしたが、最盛期の1960年代には約7万部の発行部数を記録するまでになりました。しかし、そのあいだ中ずっとストーンにはFBIの尾行がついていたのです。

ジャーナリズムの凋落が目立つ現在、米国ジャーナリズムの真髄を体現したひとりであるストーンの足跡を振り返ってみたいと思います。伝記を上梓した作家 D・D・グッテンプランが、この稀代のジャーナリストの生涯について話します(中野)。

D.D.ガッテンプラン D.D. Guttenplan ネイション誌のロンドン特派員で、I.F.ストーンの伝記American Radical: The Life and Times of I.F.Stone(『アメリカの急進派 I.F.ストーンの一生とその時代』)を書いた。

I.F.ストーン I.F.Stone ・1988年3月22日放送マクニール=レーラー・ショーの、ロバート・マクニールによるインタビュー。ストーンはこの時、古代ギリシャの史実を扱った『ソクラテスの審判』を出版した直後だった。
・1965年カリフォルニア大学バークレー校でのベトナム戦争をめぐるティーチインの録音(パシフィカ・ラジオのアーカイブより)

Credits: 

字幕翻訳:中村達人/校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子・高田絵里