オバマの戦争 アフガニスタン干渉の過去、現在、未来 後編

2009/2/23(Mon)
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9
35分

オバマ大統領は就任早々、アフガニスタンに展開する米軍の兵力を1万7千人増強することを承認しました。増派は5月以降に実施され、アフガン駐留米軍の規模は5万5千人に拡大します。米駐留軍のマキャナン司令官は、アフガン政府を支援して反乱を掃討し、国を再建するには南部での作戦を強化する必要があるとしています。しかし米軍の掃討作戦は民間人の犠牲者を急増させており、占領軍に対する住民の反発が高まっています。

ソ連軍のアフガン撤退から今年で20年。10年に及ぶアフガン占領を終えた直後にソ連邦は崩壊しました。米国のアフガン占領はすでに7年目です。「オバマの戦争」ともいわれるアフガニスタンへの軍事介入強化の是非をめぐり、5人のゲストを迎えて、歴史をさかのぼって徹底検証しました。

ソ連侵攻と欧米の報道機関追放後、1981年に初めて現地の様子を伝えた2人の米国人記者は、現在のアフガニスタンの紛争の源は米国政府にあると主張します。20世紀前半には国家形成に向けてゆっくりと独自の近代化を遂げていたアフガニスタンでしたが、特に70年代末からソ連と米国の代理戦争の地と化してしまったことが、順調な社会進化を捻じ曲げてしまったと彼らは言います。ソ連の影響力をけん制するために米国は現地の非民主的な勢力を支援し、パキスタンを介してイスラム圏からの志願兵(ムジャヒディン)を送り込んでイスラム主義武装勢力をアフガニスタンに植えつけました。アフガニスタンを非近代化する政策のキーパーソンが、カーター政権の国家安全保障担当補佐官ブレジンスキーです。

このことがアフガニスタンの女性の権利の剥奪に大きな影響を与えました。映画「アフガニスタンの女性たち:闘いの歴史」のフォスター監督は、「女性が権利を失ったのはタリバン政権下ではありません、その前の1992年にムジャヒディンが権力を握った時です。ムジャヒディンとタリバンの違いは髭の長さ程度です。どちらも米国、サウジ、パキスタン軍情報部の支援によって、パキスタンの宗教学校で教育、訓練された人々です」と言います。

米国がアフガニスタンに関与し続ける理由は、ブレジンスキーによれば、この国が地理的に米国のユーラシア大陸支配の要にあたるからでした。世界の石油の7割が埋蔵され、世界最多の人口と富の過半を抱える大陸の中心にあるアフガニスタンを支配するため、米国はあらゆる手段に訴えてきました。しかし現実には、米国がアフガニスタンへの軍事介入を続けても、安定した政権の樹立につながる見込みは薄く、住民の反発がたかまるばかりであり、中央アジアの覇権どころか撤退すらも難しくなる一方のようです。(中野)

*アナンド・ゴーパール(Anand Gopal)米国の新聞『クリスチャン・サイエンス・モニター』のアフガニスタン特派員。AnandGopal.comに記事のアーカイブあり

*ポール・フィッツジェラルド(Paul Fitzgerald)とエリザベス・グールド(Elizabeth Gould)ソ連のアフガン侵攻と欧米ジャーナリスト全員の国外退去処分の後、1981年に米国人ジャーナリストで初めてアフガニスタンの横断取材を許可された。取材内容はCBCのイブニングニュースで特報され、PBSのドキュタリー番組『3つの世界』を制作した。米国のアフガニスタン干渉についての書籍Invisible History: Afghanistan’s Untold Story(『見えない歴史: アフガニスタンの知られざる物語』)を共同執筆したところ。

*キャスリーン・フォスター(Kathleen Foster) フォトジャーナリスト、ドキュメンタリー作家。最新作は Afghan Women: A History of Struggle(『アフガニスタンの女たち 戦いの歴史』)

*ジル・ドロンソロ(Gilles Dorronsoro)カーネギー平和財団の客員研究員。元ソルボンヌ大学の政治学教授で、アフガニスタン関係の著作物にはRevolution Unending: Afghanistan, 1979 to the Present (『終わりなき革命 アフガニスタンの1978年から現在まで』)やFocus and Exit: An Alternative Strategy for the Afghan War(『集中と撤退 アフガン戦争の別の選択肢』)など

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字幕翻訳:田中泉/校正:永井愛弓
全体監修:中野真紀子