ゲイ人権運動の先駆者クリーブ・ジョーンズとワシントン行進
毎年10月11日は米国では「全米カミングアウトの日 National Coming-Out Day(全米カミングアウトの日)」とされています。もっとも、これはべつに政府が定めた記念日ではありません。米国のゲイ・コミュニティが、まだ自分をゲイだと言えない老若男女に「カム・アウトする(自分が同性愛者だと公言する)」ことを勧めようと定めた日です。今はゲイだけでなくLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)と総称される性的少数者全体のカムアウトを奨励する日として、この運動はカナダや欧州にも広がっています。
その制定21年目に当たる今年、ワシントンDCで数万人の性的少数者とその支援者を集めて「The National Equality March(平等を求める全米政治行進)」が行われました。日本ではほとんど報じられませんが、性的少数者たちの人権問題は米国では最大の国内的政治課題の1つです。この「平等」とは、現在最大の議論の的である「結婚権の平等」をめぐってスローガン化しました。同性愛者たちも同じ税金を払っている米国民なのだから、同性婚も異性婚と同じく、平等に認められて然るべきだという議論です。そこから、これまで取り残してきた「雇用条件の平等」や「従軍権の平等」も含めて、LGBTの人権を異性愛者たちと等しく認めよという大マーチが企画されたわけです。
この行進の前日10日、オバマ大統領はLGBTの最大の人権組織ヒューマン・ライツ・キャンペーンの夕食会で演説し、選挙期間中の公約であった「Don't Ask, Don't Tell(訊かない、言わない)」政策の撤廃を改めて約束しました。これはクリントン政権時代に法制化されたもので、それまで従軍を禁止されていた同性愛者たちが、それでも兵士として米国のために働けるように、上官や同僚たちが「おまえはゲイ(レズビアン)か?」と聞きもしないし、また本人が自分から「自分はゲイ(レズビアン)だ」とも言ったりはしない、と取り決めた規定です。つまり、ゲイ(レズビアン)であることを公言しない限り、ゲイではないとみなして従軍できる、としたもので、オバマ大統領は選挙戦時点からこれは欺瞞だとして廃止を宣言していました。ところがいまのいままでオバマ政権は、撤廃に向けての手続きを具体的にはなにも行っていなかったのです。
ここでお届けするのは、そのことが問題だと考えたデモクラシー・ナウ!が6月19日の時点で放送したインタビューです。LGBTの人権運動の歴史と、オバマ政権の問題点が明らかになります。最初に、今回のワシントン大行進を計画した1人で、映画にもなったハービー・ミルクの“弟子”でゲイ人権運動のベテラン活動家クリーブ・ジョーンズが登場します。(北丸)
*なお、日本ではあまりまだ浸透していない用語ですが、ゲイやレズビアンなどの性的少数者を総称して英語では「LGBT」と表記するのが一般的です。それぞれ頭文字で「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、ト ランスジェンダー」の意味です。
クリ―ブ・ジョーンズ(Cleve Jones)
サンフランシスコで長年ゲイ権利運動にかかわってきた活動家。1985年、AIDSメモリアル・キルト運動を推進するNAMESプロジェクトを創始した。サンフランシスコAIDS基金の設立者の1人。2009年10月に、婚姻の権利の平等を求めるワシントン行進を計画している。
字幕翻訳:川添峡子 校正:桜井まり子
全体監修:北丸雄二・中野真紀子・付天斉