パトリック・コウバーンが語る 米軍地位協定をめぐる対立

2008/6/12(Thu)
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大統領選挙一色に染まった米国のメディアでは、イラクはもうニュースの片隅に追いやられています。新しい展開はなく、相変わらず状況は悪いままだと。しかし、その陰で国の将来を決する重要な協定が米国との間で交わされようとしています。米軍の無期限駐留を受け入れて米国に従属国家になるのか、主権を回復するのかの瀬戸際なのです。このニュースを暴いたロンドンのインディペンデント紙記者パトリック・コウバーン氏に話を聞きます。

米軍のイラク占領を正当化している国連による委任は2008年12月に期限が切れます。ブッシュ政権は、これが切れる前に、米軍のイラク駐留を無期限に認めさせる二国間協定を結ぼうと、イラク政府に圧力をかけています。報道機関が入手した当初の協定案は、58カ所の米軍基地の恒久化、米軍関係者や民間軍事業者への免責特権、イラク政府の承認なしに自由に軍事作戦を実行する権利やイラク上空の制空権などを求めていたそうです。

当然イラク国内の反発は強く、与党もいれて多くのイラク人が主権を譲歩するくらいなら米軍は出ていけと言います。国連の委任期間が終了する前に協定を結びたいブッシュ政権は、協定内容に一定の譲歩を示しているようですが、反対は収まっていません。政府がこの協定にサインすれば、米国の手先である証拠だとみなされて、イラク人のあいだで正統性を失い、内戦拡大の火種になるとコウバーン氏は警告します。マリキ首相も、この協定を受け入れることの政治的リスクは承知しているはずですが、最終的には米国が頼りなので断りきることはできないようです。

11月にはいって政府は米国側の譲歩を評価し、協定を受け入れる方針を打ち出しましたが、これに対する抗議行動も起こり、緊張が高まっているようです。(中野)

パトリック・コウバーン(Patrick Cockburn) ロンドンのインディペンデント紙の中東特派員。多数の著書があり、最新書は Muqtada: Muqtada al-Sadr, the Shia Revival and the Struggle for Iraq(『ムクタダ イラクにおけるシーア派の復活と権力闘争』)

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字幕翻訳:田中泉 / 校正:桜井まり子
全体監修:中野真紀子・高田絵里