チャベスと希望の枢軸 タリク・アリの新著『カリブの海賊』

2006/10/17(Tue)
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中南米に新旋風を巻き起こしたウゴ・チャベス大統領。米国メディアによる執拗な中傷にもかかわらず人気は絶大です。その魅力を振り返ってみましょう。

2006年10月、国連安全保障理事会の議席の中南米枠をめぐってベネズエラとグアテマラが接戦を重ね、結局5日間で47回も投票をやった後に妥協が成立し、両者に代わってパナマが議席を得るという事件がありました。安保理議席は回り持ちで、普通なら文句なくベネズエラが代表となる所でしたが、新自由主義反対の急先鋒チャベス大統領が安保理を舞台に新たな対抗軸となるのを恐れたブッシュ政権が無理やりグアテマラを送り込もうとした結果でした。

1998年の初当選以来、中南米の台風の目となってきたチャベス大統領は、従来の対米従属に代わる新しい世界観を打ち出し、キューバやボリビアを巻き込んで希望の枢軸を形成していると、タリク・アリは述べます。「イラクの状況は、あまりにも絶望的です。いま必要なのは、世界は変えられるという希望を与える本だと思いました。アラブ世界の絶えまない流血は心を暗くしますが、中南米に目をやれば、かつては米国の支援する独裁者が民衆の運動を力で抑えていたのに、いまやチャベスやモラレスが民主的に選出され、選挙で公約したとおりの政策を実行しています。新自由主義の深い眠りから、この世界をゆり起こすのは可能なのです」。 

2002年4月のクーデター未遂事件では、ベネズエラの民衆や軍の下士官や兵士たちが立ち上がって、自力で大統領を復権させました。大衆の絶大な人気は、公約どおりの政策を実行するからだとアリは言います。政治家が約束を守ることを誰も期待していない多くの国には、とても新鮮で希望を与える存在です。(中野)

★ DVD 2008年度 第1巻 「中南米の潮流」に収録

*タリク・アリ (Tariq Ali) 英領インド(現パキスタン)に生まれ、イギリスで教育を受けた作家、歴史家で、評論家。『ニュー・レフト・レビュー』の編集者の1人。著書多数

Credits: 

字幕翻訳:佐藤真喜子 / 全体監修:中野真紀子