地球を貪る資本主義を非難し 世界のカトリックに気候変動への決起を促す 「急進的」教皇フランシスコ
フランシスコ教皇は、自然保護を訴え気候変動への行動を促す画期的な「回勅」(教皇書簡)を準備です。これは教皇による最高形式の教示で、司教や司祭に送付され、彼らを通じて全世界のカトリック教徒に重く受け止められます。今年末にパリで開かれる国連気候変動サミットが真に効果のある対策を打ち出すものになるよう、世界規模で決起を促すものですが、世界のカトリック人口は12億人に達しますから、教皇の呼びかけはどんな環境団体のキャンペーンよりも遠大な影響力を持つでしょう。
バチカンの改革者として登場し何かと話題を呼んできる教皇ですが、今回の回勅はとりわけ論争を招くかもしれません。教会の中には気候変動をめぐる議論に懐疑的で、特に資本主義との関連付けには納得しない人々がいるからです。教皇の新しい評伝を書いたオースティン・アイバリーによれば、教皇は気候変動を特定のタイプの資本主義と結びつけています。その資本主義経済モデルは世界の一部に富と成長をもたらす半面、他の地域に貧困と慢性失業、環境破壊をもたらしています。そのような破綻したモデルに代わって、人間優先のシステムが必要だと教皇は訴えています。教皇が名前を取ったアッシジの聖フランシスコは「清貧と平和の人、自然への愛と保護」の象徴です。貧しい人々の側に立ち、現代の我々が見失った神の創造物との関係を捉えなおすことをモットーとする教皇は、フランシスコの名を取ったときから環境保全の回勅についての考えを温めていたはずだとアイバリーは言います。
気候変動対策と現行の資本主義モデルを見直す必要を結び付けているところは、ナオミ・クラインの新著This Changes Everything: Capitalism vs. the Climate(『これがすべてを変える 資本主義VS気候変動』)とぴったり一致しているのが興味深いところです。最近の報道では、どうやら回勅が出るのは6月ごろになる見通しのようですが、はたして教皇の大号令がどのような効果をもたらすのか、とっても楽しみですね。後半のインタビューは「解放の神学」との絡みを取り上げます。(中野真紀子)
*オーステン・アイバリー(Austen Ivereigh)英国の作家、コメンテーター、「カトリックの声」の共同設立者。新しい評伝
The Great Reformer: Francis and the Making of a Radical Pope(『偉大な改革者~急進的教皇フランシスの誕生まで』)の著者。
字幕翻訳:川上奈緒子/校正:中野真紀子