米国でもヨーロッパでも、財政赤字削減の掛け声のもと、財政支出への攻撃が強まっています。ノーベル賞受賞者の経済学者ポール・クルーグマンは、『さっさと不況を終わらせろ』(End This Depression Now!)という新刊書の中で、財政赤字に対する過剰な反応は、高失業率と賃金低迷がつづく現状においては景気回復の足かせになると論じています。「経済学は実に簡単なものです」とクルーグマンは言います。「政府がもっとお金を使い、ここ数年間の国や地方公共団体の財政緊縮政策により解雇された教師、消防士、警察官らを再び雇用すれば、再び完全雇用を実現する方向に向けて大きく前進します。現状の経済は支出不足に陥っていますが、こういうときにこそ政府が介入して必要な需要を創出する必要があります。景気後退のさなかに緊縮財政を推進するような政策は、(世界恐慌が起きた)1930年以降ずっと採用されたことはありません。そんな政策をとれば、さんざんな結果になるのは明らかです」。クルーグマンはプリンストン大学の経済学教授で、ニューヨーク・タイムズに経済コラムニストとして寄稿しています。