シリコンバレーの光と影 マルコム・ハリスが新刊『パロアルト:カリフォルニアと資本主義と世界の歴史』を語る
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学生字幕コンテスト2023 課題2 :シリコンバレーの光と影の受賞作です
話題の新刊書 ”Palo Alto: A History of California, Capitalism, and the World”(仮訳『パロアルト:カリフォルニアと資本主義と世界の歴史』)について、著者のマルコム・ハリス氏に話を聞いています。彼の故郷であるパロアルトは、シリコンバレーの中心に位置し、多数のテック系億万長者を輩出しました。独自の資本主義ブランドを世界中に送り出し、資本主義経済を新たな段階に導いた土地ですが、これまで影の部分はあまり語られてきませんでした。
スタンフォード大学と一体化して発展したパロアルト市はIT企業が集まるシリコンバレーの心臓部です。ここで育ったマルコム・ハリスは高校時代に多くのクラスメートが自殺するのを体験しました。なぜ子供たちの自殺が多発するのか、という疑問からハリスはパロアルトの歴史の暗部に踏み込みます。といっても西海岸の歴史は浅く、開拓者の入植がはじまったのは、わずか150年前です。明治維新とさほど変わらない時代に、先住民の土地を奪って築いた土地なのです。
高校生の自殺の名所となった鉄道線路は、スタンフォード大学の礎を築いたリーランド・スタンフォードが建設したものです。鉄道経営で巨万の富を築いたリーランドは、馬の育種に興味を持っていました。パロアルトに育種農場を持ち、世界一の競走馬を生み出すための仔馬の峻別と調教を行うシステム(パロアルト・システム)を作り上げました。 この風土のから生まれたのが、最も将来性のある個体の教育や研究や事業計画に戦略的に投資するというシリコンバレーの精神であり、絶え間ないイノベーションの繰り返しにより、人類史上かつてない爆発的な富の創造がもたらされました。しかし容赦のない利益最大化の追求は、そこに生きる個人や社会に破壊的な影響をもたらしているとハリスは指摘します。(中野真紀子)
マルコム・ハリス(Malcolm Harris)ジャーナリスト、Palo Alto: A History of California, Capitalism, and the World の著者
字幕翻訳: 松﨑望実(青山学院大学文学部英米文学科4年 受賞当時)
校正: