バンダナ・シバ:1%の支配に反撃して6度目の大量絶滅を防げー(2)1%のマネーマシン
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種子法の改定や水道ガス事業民営化推進など、日本でもグローバル資本主義の脅威が実感されるようになってきました。こうした動きと闘いづづけてきた大先輩、インドの環境活動家バンダナ・シバの発言に、いまこそ耳を傾けましょう。新著の紹介にからめて、彼女が30年ほど前に創始したナブダーニャ(9つの種)運動やモンサントがインドで引き起こした惨状、進化したグローバル資本主義の現状などが語られます。
始まりは種子の支配をめぐる戦いだったとシバは言います。生き物である種子に特許権を主張し、農民の生産活動に対して使用料を要求するような仕組みが作られていることへの危機感でした。在来品種の自家採取を阻害し、世界の種子の支配を企む巨大企業に抗して、シバは在来種の保護と生物多様性の維持、自然の循環を大事にする農業の重要性を訴えました。
モンサントが導入した遺伝子組換え綿花「Btコットン」の浸透によって、インドでは膨大な数の農民が借金を背負いました。GMO種子が綿花作付けの99%を占めるという独占状態の中で、毎年高額の種子を買わされ、セットになった除草剤の使用も増えたからです。灌漑設備のない天水農業地帯ですから、いったん干ばつに襲われれば借金が返せず、綿花地帯を中心に数十万の農民が自殺に追いやられました。単一種子を大規模に栽培する手法の脆弱性がもたらした悲劇です。
しかもモンサントは、インドの国内法を踏みにじって特許使用料を徴収していたことが裁判によって明らかになったのに、マスコミを操って正確な情報の伝達を妨げているとシバは指摘します。モンサントを買収したバイエルをはじめとする3つの巨大化学企業連合を、シバは「毒カルテル」と呼んでその汚いやり口と毒性化学兵器を製造していた過去をあばきます。
新著『ワンネスと1%の対決』では、株式や所有権について掘り下げます。今日の世界を牛耳る巨大企業はすべて、大金持ちの資産を運用する投資ファンドが株式の過半数を握っています。最大手のブラックロックがリーマンショック後に急成長した会社であることが示すように、世界的な金融危機の後に急速に肥大化した金融バブルがグローバル企業の収益を増幅させ、各国の主権を踏みにじるほどの力を与えています。でも、もともとは特許権に寄生するレント(使用料)収集ビジネスであり、実際の生産はしない虚業です(シバはこれをマネーマシンと呼んでいます)。マイクロソフトやアマゾンはその究極の形です。
生身の人間の生活や地球環境を犠牲にしながら拡大するマネーマシンが、政治機構をコントロールしているため、気候変動にも大量の種の絶滅にも有効な手が打てず、わたしたちは急速に破滅に向かって進んでいるとシバは警告します。このような企業支配にとって代わる、オルターナティブなシステム(食糧民主主義)こそが人類を救うと彼女は言います。(中野真紀子)
*バンダナ・シバ(Vandana Shiva):インドの学者、環境活動家、食糧主権や種子の自由を唱道している。グローバル化の別のあり方についての著書多数。最近著はOneness vs. the 1%(『ワンネスと1%の対決』)
字幕翻訳デモクラシー防衛同盟(千野菜保子・仲山さくら・水谷香恵・山下仁美・山田奈津美) 全体監修:中野真紀子