スタンディングロック特集(2) 警察の過剰な取り締まりとアメリカ先住民へのシステマティックな差別の歴史

2016/11/24(Thu)
Video No.: 
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20分

ノースダコタ州スタンディング・ロックでのアメリカ先住民とその支持者による原油パイプライン建設への抗議活動を特集で取り上げます。この建設計画は、総工費38億ドルを投じ、日に50万バレルもの原油をノースダコタ州バクケン油田からサウスダコタ州とアイオワ州を通り、イリノイ州の製油所に送ると言う巨大プロジェクト。この建設計画をめぐり、建設ルート近くのスー族は、古くからの聖地や埋葬地が脅かされるばかりでなく、パイプラインから原油が漏れ出た場合、居留地の水源に打撃を与え、飲料水として利用するミズーリ川が汚染されることを懸念し、建設の中止を訴えています。10月にオバマ大統領が建設差し止めを命じる直前までの、初期の動きの総集編です。2016年9月3日、エイミー・グッドマン自身がメディアとして初めて現地に出向き、緊迫した抗議の様子をレポートしました。警察、民間警備員らの居並ぶ中、建設を阻止しようと素手の抗議者が建設現場に向かって行進しているところに、建設会社の雇った民間警備員が犬をけしかけ、とうがらしスプレーを使って攻撃を加えました。この抗議活動をレポートした衝撃的な映像がSNSで大きな反響を巻き起こし、大手メディアも取り上げるようになりました。

その放映の5日後、影響の大きさに驚いたのか、ノースダコタ州のモートン郡の検事がエイミーに逮捕状を出しました。不法侵入が当初の容疑でしたが、後に罪状が騒乱罪に切り替えられました。しかしエイミーが裁判所に出頭する直前、判事によって起訴は却下されました。不当な弾圧は跳ね除けられ報道の自由を勝ち取ったのです。

後半では、スー族でリーダーの一人、サラ・ジャンピングイーグル医師他への現地インタビューで、非常に多くの抗議者を微罪で連行・勾留し、全裸にして身体検査が行われていることが明らかに。このやり口は、法よりも尊厳の問題であり罪は深い。そのような屈辱的仕打ちは、少数民族に対する差別やヘイトが根底にあると指摘します。かつて受けた祖先の受難、虐殺と収奪の歴史におのずと思いが至ると言います。そのような過去の記憶と今もなお差別を受け続ける現実は、長く厳しい弾圧に耐える原動力となり、人権や環境正義の旗のもと「勝つまで戦う」というしぶとい抵抗となって人々の間に連帯と共感を生み、国際的ムーブメントを巻き起こしています。

続いてアメリカ先住民の活動家であり、元米大統領候補にもなったウィノナ・ラデュークさんとタラ・ホウスカさんに話を聞きます。現場の状況の他、新たなパイプライン建設計画、非暴力・直接行動に徹する運動などを語ってもらいます。エネルギーの安全保障という大義名分の嘘、市民の保護という本分を忘れた警察。「暴徒」や過激派というレッテル張り。厳しい環境影響評価を逃れるための詭弁。こうした数々のごまかしと激しい弾圧を透かせば、州当局が警察を使って巨大石油企業の利権をがむしゃらに守ろうとする姿が見えてきます。この抵抗運動は、底辺から湧き上がる必死の民主主義に支えられ、人種や人権問題だけでなく、エネルギーとエコロジー、開発と環境という課題も巻き込んだ大きなテーマを抱えているのです。

沖縄の基地反対運動が彼らの姿に重なります。ここにも国に対する真剣な疑義、特権階級だけが痛みを感じない同様の差別の構造が見えるからでしょう。(岩川明子)

*サラ・ジャンピングイーグル(Sara Jumping Eagle):スタンディングロック・スー族の医師
*タラ・ホウスカ(Tara Houska):オジブワ族の先住民活動家 「オナー・ジ・アース」の全国キャンペーン責任者
*ウィノナ・ラデューク(Winona LaDuke):アニシナアベ族の先住民活動家、「オナー・ジ・アース」の共同設立者。作家、元グリーン・パーティーの副大統領候補

Credits: 

字幕翻訳:デモクラシー防衛同盟
千野菜保子・仲山さくら・水谷香恵・山下仁美・山田奈津美・岩川明子
/全体監修:中野真紀子