FCC ネット中立性の保護に転換 ケーブル業界の支配から「開かれたネット」を守る市民の勝利

2015/2/6(Fri)
Video No.: 
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12分

2015年学生字幕翻訳コンテストで取り上げた課題の(1) 市民が守る「ネットの中立」の字幕動画です。これから順次、受賞作を掲載していきます。

インターネットが企業利益の追求のために二層化してしまうところだったのを、反対する大勢の市民の声が止めました。「ネットの中立」という抽象的な言葉ではぴんとこないのですが、ことの重大性を普通の人々に周知させる努力がいかに重要かがよくわかります。

インターネットを根本から変えることになる問題の深刻さや、ここに至るまでの紆余曲折については、この2014年の動画をご覧下さい→ 「マイケル・パウエルの置き土産とネット中立性を守るバトルの再開」

オバマ大統領が任命した新FCC委員長トム・ウィーラーは、ケーブル業界やワイアレス業界を代表する大物ロビイストを務めた人物だったため、もはやネット中立性の原則は風前の灯火と思われていました。ところが、そのウィーラー委員長が2015年2月、180度の方向転換を見せ、「インターネットの中立」を守るためFCC史上最強の規制を導入する方針を打ち出しました。

まさかの手のひら返しの背景には、FCCに殺到した400万人もの市民からのパブリックコメントがありました。かつてマイケル・パウエルFCC委員長がメディア所有規制の大幅緩和によるメディアの大統合を企てたときも、200万人の市民が反対意志を表明したため撤回に追い込まれました。この2002年のできごともすごかったのですが、今回はなんとその倍の数の市民が行動を起こし、業界ロビーの圧力を覆したのです。

さすがアメリカだ、などと関心しているだけではいけません。米国だって普通の人には、「ネットの中立性」なんて抽象的すぎて魅力のない言葉です。こんな注目されにくい観念をわかりやすく説明し、ことの重大性を大勢に知らせる努力があってこそ、これだけの動員ができたのです。短期間のうちに大規模な運動を全国に巻き起こしていったメディア活動家や改革団体の努力には学ぶことが沢山あります。キャンペーンを組織してきた主要団体の一つ「フリープレス」のティム・カーは、ここ5年ほどでメディア改革運動は大きな盛り上がりをみせ、いまや米国のネット市民は一つの運動母体を形成するようになっていると指摘しています。マスコミ批判の一方で、こうした新メディアの支持母体を作り上げていく努力も重要ですね。(中野真紀子)

*ティム・カー(Tim Carr):メディア改革団体「フリープレス」の戦略担当シニア・ディレクター

Credits: 

字幕翻訳:早崎成志(国際基督教大学2年) 2015学生字幕翻訳コンテスト授賞作品 /校正:中野真紀子