【EXPRESS】イラン・パペ:イスラエルは2014年にアパルトヘイト国家の道を選んだ

2014/7/28(Mon)
Video No.: 
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8分

停戦交渉が停滞する中、イスラエルのガザ攻撃は激しさを増しています。すでにパレスチナ人の死者は1100人を超え、イスラエル兵も53人が死亡しています。意図的に一般市民を攻撃するイスラエルの戦争犯罪については、2008年末から2009年はじめにかけてオバマ就任直前に行われた前回のガザ侵攻のときと同じですから、とくに新しい字幕はつけていません(下の関連動画のところで紹介した当時の動画をご覧ください)。今回の侵攻に関しては、いまなぜ攻撃が繰り返されているのか、停戦のためには何が必要かという点にしぼって、簡潔にとりあげました。イスラエルのハイファから、歴史学者のイラン・パペへの短いインタビューをご覧ください。

停戦交渉には、2つの提案が競合しています。イスラエルがエジプトと組んで推進する提案は、以前の状態に戻してそれを維持することです。でもハマスが闘ってきたのはガザの封鎖を解くためです。(ハマスは本当は何を要求しているのか? イスラエル人ジャーナリストのギデオン・レヴィが語るガザの致命的封鎖の終焉)21世紀の世界ではありえないような非人道的な封鎖がもう7年も続いており、これを解放するために徹底抗戦の構えです。ガザの解放こそが問題解決のカギなのですが、イスラエルは聞く耳を持ちません。米国のケリー国務長官がトルコなどと協力して進める提案では、ガザの封鎖解除という本質的な問題に触れていますが、イスラエルは拒絶しています。

イスラエルの狙いは、流動する中東情勢の中でほころびてきたパレスチナの支配を建て直し、オスロ体制以来の詐欺的な図式に戻して占領地を無力化し侵略と植民地支配を続けることです。今年の春ごろから、エジプトのクーデターでムスリム同胞団の後ろ盾を失ったハマスは西岸の自治政府アッバース大統領に歩み寄りをみせ、両派の和解による統一政府をめざしていました。これによって国連を通じて国際社会にパレスチナ人の権利を訴える計画ですが、イスラエルはこれを阻止するために軍事弾圧を計画していたようです。6月に西岸地区で3人の若いユダヤ人入植者が誘拐殺害された事件は格好の口実となり、イスラエルはこれをハマスの犯行と決め付けて大々的な弾圧を西岸とガザの両方で進めました。

ガザの一般住民に対する非人道的な攻撃は2006年のときも2008-9年のときも同じですが、国際社会がそれを見る目は変わってきています。もはやマスメディア操作をいくらやっても戦争犯罪を隠すことはできず、頼みの米国も中東における覇権を著しく弱体化させています。こんな中でイスラエルが危険な賭けに出たのは、イスラエルの内部で進行する人種差別とファシズムを反映しているようです。イスラエル国内の右傾化については、マックス・ブルーメンソールや元イスラエル空軍の反戦活動家ヨナタン・シャピラなどが詳しく語っていますが、イラン・パペも「イスラエルは2014年に、アパルトヘイト国家への道を進むと決断したのです」と発言しています。(中野真紀子)

参考 :
・「ゴリアテ」─イスラエルで加速するレイシズム(字幕つき)
http://democracynow.jp/video/20131004-4

・イスラエル 平和デモに暴力的な妨害で負傷者多数 反デモ勢力は「アラブ人に死を」と叫ぶ
http://democracynow.jp/dailynews/14/07/21/4

・「われわれの名を使って行われている残酷な作戦」に反対を表明 イスラエル軍予備兵が軍役を拒否
http://democracynow.jp/dailynews/14/07/24/3

*イラン・パペ(Ilan Pappé):1954年イスラエル生まれ。英国エクセター大学の歴史学教授。イスラエルのハイファ大学に2006年まで務め、シオニズムを批判的に研究。代表的な「ニューヒストリアン」(建国神話を検証するイスラエルの歴史学者たち)で、最新の著作はThe Idea of Israel: A History of Power and Knowledge(『イスラエルという理念 権力と知識の歴史』)です。

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字幕翻訳:桜井まり子 / 校正・全体監修:中野真紀子