ノーム・チョムスキーが告白 本当は大学教育を受けていない 自分の映画も見ていない

2013/12/3(Tue)
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8分

クラウドファンディング字幕の第三弾はノーム・チョムスキーを取り上げたフランス人監督による新作ドキュメンタリー映画です。

アニメ手法を使った斬新な映画『背の高い男は幸せ?』(Is the Man Who Is Tall Happy?のお披露目の上映で、主人公(?)のノーム・チョムスキーがミシェル・ゴンドリー監督の対談が行われました。チョムスキーは自分が受けた教育について「じつは私は研究者としての専門資格を持っていません」と、最初から聴衆をびっくりさせます。じっさい、言語学の世界に革命を起こした大学者も、若い頃には先行きが見えず、「このまま大学からドロップアウトしてキブツで暮らそうか」などと考える不安定な時期もあったようです。

もうひとつのトピックは、20年ほど前につくられた長編映画『チョムスキーとメディア ~マニュファクチャリング・コンセント』です。こちらもチョムスキーを主人公としたマニアックで型破りな作品です。2人の監督のうちピーター・ウィントニックが上映会の直前の11月18日に亡くなったこともあり、この伝説の作品についてもチョムスキーが振り返ります。

これは2人のカナダ人が5年間にわたってノーム・チョムスキーを追っかけ回して撮影し、溜め込んだ膨大な映像を編集した作品で、チョムスキーの思想と人物、マスメディアとの関係を描きながら、同時に映像テクニックの駆使とその虚偽性を問う、凝りまくったつくりです。映画を思い立ってから完成まで、ずっと資金を集め続け、金欠になるとパトロン探しに奔走し、集めた資金で制作を再開するという具合で、最終的に40ページに及ぶ企画書を4000カ所の財団や企業基金や有力プロデューサーに送ったそうです。おかげで本当に多くの人を巻き込むことになり、完成した映画はカナダのドキュメンタリーとしては空前の大ヒットとなりました。

この映画がチョムスキーの好感度を押し上げたことは間違いないと思いますが、ご本人は自分の姿を映画で見るのは耐え難いと言って、一度も見ていないようです。そのくせ、映画で描かれたチョムスキー像が実態とかなり違うので戸惑っているという発言もしていて、見てもいないものを批評するという、およそ彼らしくない態度もみせていました。まあ、たぶんに照れがあったのかもしれません。そうした態度に比べて今回のゴンドリーさんの新作にはとてもハッピーなご様子。年を重ねてずいぶん丸くなったなあという印象です。(中野真紀子)

☆ このセグメントはクラウドファンディングが成立したおかげで字幕をつけることができました。スポンサーになっていただいた皆さんに、心から感謝を申し上げます。

*ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky) 言語学者、マサチューセッツ工科大学(MIT)名誉教授。政治評論家。ミシェル・ゴンドリー監督のアニメ映画『背の高い男は幸せ?』(2013)、およびピーター・ウィントニック&マーク・アクバー共作の長編ドキュメンタリー映画『チョムスキーとメディア マニュファクチャリングコンセント』(1992)の主人公。

Credits: 

字幕翻訳:桜井まり子 / 校正:中野真紀子