政府の学生ローンが若者を餌食に生み出す第二の住宅バブル

2013/8/20(Tue)
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この夏、連邦政府が貸し出す学生ローンの金利をめぐって議会が紛糾しました。スタッフォード・ローンの金利低減措置が7月1日で失効するため、一部のローンでは金利が3.4%から6.8%へと2倍に跳ね上がり、何百万人の学生が負担の増加に直面することになります。この事態を緩和するための措置が議論され、8月になってようやく、2015年までは低金利に据え置くという超党派の法案が可決しました。しかし、これは一時しのぎにすぎず、長期的には返済の負担は増加すると予想されています。でもローリング・スト ン誌の政治記者マット・タイビによれば、政府系学生ローンに絡む本当のスキャンダルは、ローン金利の問題ではありません。本当に悪質なのはローン元本そのもの、つまり際限のない学生ローンの提供が招いた授業料の異常な高騰という、一種の学費バブルです。

かつての住宅ローンバブルと同様、学生ローンに支えられた高額の学費は実際の需給バランスを反映していません。政府が学生ローンをじゃぶじゃぶつぎ込むので、その分だけ学費が上昇していくのです。民間の金融業者と違って政府には強力なローン回収能力があります。給与も社会保障給付も租税還付金もすべて押さえられては、踏み倒しは難しい。貸し倒れの心配がないうえに、貸付けで儲かるのですから、政府はいくらでも学生ローンを貸し出します。借り手の学生が、投資に見合うような就職口を得られるかどうかはお構いなしです。そもそもバブルで金ぴかに化粧した大学に、巨額の教育投資に見合うような就職先が斡旋できるのか、はなはだあやしいのです。

こんな無責任な政策によって、何百万人もの若者が人生のはじめから借金を背負わされています。折しも州政府の財政危機で教育機関への助成や奨学金は減少の一途ですから、若者たちは学生ローンへの依存を深めざるを得ません。オキュパイ運動でも学生たちが掲げるスローガンは「債務撲滅」でした。この世代に背負わされた共通の敵なのかもしれません。(中野真紀子)

*マット・タイビ(Matt Taibbi): ローリングストーン誌の政治記者。ゴールドマン・サックスなど大手金融業界の詐欺的な手法などを痛烈に批判。このインタビューに関連する記事は、"Ripping Off Young America: The College-Loan Scandal."

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字幕翻訳:斎藤雅子 校正:中野真紀子