「癒える権利」運動:私たちは共に同じ戦争による被害者

2013/3/20(Wed)
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14分

2013年3月の米国によるイラク侵攻から、はや十年が経ちました。米軍はほぼ完全にイラクから撤退し、新聞の見出しにイラクの名前を目にすることも少なくなりましたが、今なお戦争による癒えない傷を抱えて生きている人たちが、米国にもイラクにも大勢います。

「自分たちは共に、同じ戦争による被害者である」ー戦争中は、殺す側と殺される側に二分されていた元米軍兵士とイラク市民が、このたび手を携えて、「癒える権利」運動を立ち上げました。多くのイラク人、また退役軍人やその家族は、今も戦争の後遺症であるトラウマや身体的な傷に悩まされており、その影響は次世代である子どもたちにも及んでいます。また、バックに米政府がいるイラクの現政府が、国の天然資源を外国に売り渡していることも、イラク社会の復興を妨げていると運動は指摘しており、長期にわたる戦争の後遺症と、人々の癒える権利について、米国政府が事実を承認し、その上で責任をとることを要求しています。

主要な立ち上げ団体より、「反戦イラク帰還兵の会」のマギー・マーティン氏と「イラク女性自由機構」代表のヤナール・モハメド氏が、「癒える権利」運動にこめる思いや困難な現状、そして将来への希望について語ります。二人の話はまた、戦争のもたらした二次的被害に苦しむ女性たちにも焦点を当てます。米軍では、3人に1人の女性がレイプの被害を受けていると言われており、それに対する理解や取り組みはまだまだ不十分です。またイラクでは、戦争中に性的暴行の被害を受けた女性の他にも、戦争孤児が人身売買されていたり、さらには米軍の使用した劣化ウラン弾の影響により、障害を抱えて産まれてくる子どもを持つ母親が激増したりしています。米政府からもイラク政府からもほとんど何の援助も受けられない状態で、彼女たちの多くは日々を生きるだけで精一杯の状態です。
十年一昔と言いますが、今なおこれだけの後遺症を残しているイラク侵攻を「昔」にしてしまわず、きちんと「現実」と認識して向き合って行くことが求められています。(永井愛弓)

*ヤナール・モハメド(Yanar Mohammed):イラク女性自由機構(Organization of Women’s Freedom in Iraq)代表

*マギー・マーティン(Maggie Martin):反戦イラク帰還兵の会(IVAW)の組織部長。2003年3月イラクへの侵攻軍の一員としてクウェートに駐留。

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字幕翻訳:齋藤雅子 校正:永井愛弓 Web 掲載: 桜井まり子