『汚い戦争』―世界に広がるオバマの戦争

2013/1/22(Tue)
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36分

10周年を迎えたサンダンス映画祭ドキュメンタリー部門で初上映された映画『汚い戦争:世界は戦場だ』を制作した調査報道記者のジェレミー・スケイヒル氏と映画監督のリック・ローリー氏が、アフガニスタン、イエメン、ソマリアで拡大を続ける米国の秘密戦争について語りました。2期目を迎えたオバマ大統領は長期にわたる戦争を終結させると宣言したものの、国家機密特権や無人機爆撃を強化し、ブッシュ政権以上に戦争を拡大させた戦争政権だと語ります。

両氏はこのドキュメンタリー制作にあたり、アフガニスタン、イエメン、ソマリアでの米国の戦争の軌跡を追います。スケイヒル氏は、無人機爆撃を考案し「暗殺の帝王」と呼ばれるジョン・ブレナン氏をオバマ大統領がCIA長官に指名したことは「世界は戦場だ」という新保守主義の概念を象徴していると指摘します。米国の暗殺者リストは膨大な数に増え、米国がテロリストもしくは脅威とみなす国に対してオバマ大統領やブレナン氏の一存で無差別の爆撃を行い、それにより数多くの民間人の死者が増え続けています。

「汚い戦争:世界は戦場だ」では、統合特殊作戦コマンド(JSOC)の暗躍を掘り下げています。米軍の夜襲で妊娠した女性を含む5名を殺されたアフガニスタンの家族。NATOは当初、米軍の殺人を隠匿するため家族による名誉殺人と発表したものの、羊を捧げて家族に謝罪する統合特殊作戦コマンド司令官ウィリアム・マクレイブン氏の写真が出たことで事実が暴露。オサマ・ビンラディンの殺害で統合特殊作戦コマンドの存在が注目されますが、部隊の実態は隠ぺいされるばかりで我々には実態が明らかにされていないと語ります。

また米国はソマリアやマリなどアフリカにおける戦争の拡大にも手を貸していると、世界各地の汚い戦争の拡大の裏には米国がいることを指摘します。オバマ大統領のグアンタナモ閉鎖の公約はいまだ実現されることなく、戦争の惨状は広がるばかり。ブッシュ政権の高官でさえ「我々は(容疑者を)刑務所に送り込んだが、オバマ大統領は殺人を繰り返している」と、世界で汚い戦争の勢いが増し続けることを示しています。(齋藤雅子)

☆映画『汚い戦争』はこの後、2013年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門にノミネートされました。
☆2014年3月末刊行のDVD第27巻「汚い戦争」にも収録します。

*ジェレミー・スケイヒル(Jeremy Scahill):デモクラシー・ナウ!特派員で『ブラックウォーター 世界最強の傭兵軍の勃興』の著者。プロデュースしたドキュメンタリー映画『汚い戦争:世界は戦場だ』でサンダンス映画祭撮影賞を受賞。同名の著書が2013年4月に刊行される。

*リチャード・ローリー(Richard Rowley):ビッグ・ノイズ・フィルムズ(Big Noise Films)の独立ジャーナリスト。『汚い戦争:世界は戦場だ』監督。

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字幕翻訳:齋藤雅子/校正・サイト作成:桜井まり子/全体監修:中野真紀子