マイケル・ポーランが語る遺伝子組み換え産業による食の支配─遺伝子組み換え食品の表示をめぐって

2012/10/24(Wed)
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14分

ジャーナリストでベストセラー作家のマイケル・ポーラン教授が再登場。カリフォルニア州で州民投票に掛けられた、遺伝子組み換え食品の表示を義務付ける「提案37号」を中心に、米国における食の運動とその周辺を語ります。食品の工業化の弊害を告発し続けるポーラン教授は、企業に与えられた「言論の自由」と産学官の「回転ドア」によって、モンサントやデュポンなど遺伝子組み換え推進派の巨大企業が二大政党とマスメディアを支配している構造を明らかにし、大金をかけて自然で健康的な食生活を維持できる富裕層と、選択肢を奪われて工業化された食を強制される圧倒的多数へ、食の階層化が進行することを強く懸念しています。

また後半では、ニューヨーク市ではじまった、映画館や飲食店での甘味料入り清涼飲料水の大型容器販売の禁止とその背景について語ります。米国では食の運動が環境運動に比べて40年遅れていると指摘するポーラン教授ですが、提案37号をきっかけに全米的な議論がひろがることの期待を語っています。結局、2011年11月の提案37号は否決されましたが、今後の運動の行方が注目されます。小選挙制によって民意を「集約」し、「TPP」という無機質な名の陰に本質を隠したまま、旧態依然の輸出至上主義のもとで政界・官界・マスコミが一体となって規制をなし崩しにし、農業・健康保険・地域経済の犠牲と引き換えに米系多国籍企業に国内市場を差し出そうとしている日本が、米国と共通の多くの問題を抱えていることを肝に銘じたいと思います。(斉木裕明)

*マイケル・ポーラン(Michael Pollan):カリフォルニア州立大学バークレー校教授。著書に『ガーデニングに心満つる日』(主婦の友社)、『欲望の植物誌―人をあやつる4つの植物 』(八坂書房)、『雑食動物のジレンマ─ある4つの食事の自然史』(東洋経済新報社)、『ヘルシーな加工食品はかなりヤバい―本当に安全なのは「自然のままの食品」だ』(青志社)、『フード・ルール 人と地球にやさしいシンプルな食習慣64』(東洋経済新報社)、『フード・インク─ごはんがあぶない』(共著 武田ランダムハウスジャパン)などがある。2013年には新著Cooked: A Natural History of Transformation(『調理という名の変換─博物学の視点から』)が刊行される予定。
1公式HP(英語のみ)

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字幕翻訳:関房江/校正:斉木裕明/Web作成:桜井まり子