ラルズセックのサイバー活動家たち リーダーの裏切りで逮捕-アサンジ訴追への準備か?
政治にめざめたサイバー活動家たちが特定の政治主張を掲げコンピューターやネットを使った積極行動を行うハクティビズム(hacktivist)。これを一躍有名にしたアノニマスは緩やかに連帯した匿名の人々の巨大なネットワークです。そこから派生したコンピューターハッカーの集団ラルズセックは、企業や政党、政府に対する数々のサイバー攻撃で名をはせました。
3月はじめ、このラルズセックのメンバーとされる5人の男性が逮捕・起訴されました(英国とアイルランドの男性4人がコンピューター犯罪で起訴、5人目はシカゴで逮捕されています)。もっと大きな衝撃は、逮捕者たちの情報を警察に密告したのが、他ならぬラルズセックのリーダー、「サブー」と呼ばれる人物だったことです。匿名性を前提としたネットカルチャーの落とし子のような運動の脆弱性があらわになり、大きな打撃を与えました。サブーはなぜ仲間を売ったのか?今後のハクティビズムに与える影響は?
そしてもう1つ重要なポイントは、米国でひそかに進められているジュリアン・アサンジ訴追の準備との関係です。ハッカーたちが検挙されたのは、民間諜報機関ストラトフォー社の内部メール500万通の流出事件と関係しています。これらのメールはウィキリークスのサイトでの公表されており、ファイルの転送をめぐるアサンジとハッカーたちの間のやり取りが米当局に押さえられている可能性があります。英紙ガーディアンによると、サブーはハッカーたちにストラトフォー社のEメールの置き場としてFBI所有のサーバーを用立てた模様で、ストラトフォー社のメール流出事件全体が、アサンジとウィキリークスをはめるために仕組まれたとの見方もあります。スウェーデンへの身柄引き渡しが現実味を化しそうなったいま、見逃せない情報です。(中野真紀子)
*ガブリエラ・コールマン(Gabriella Coleman):ハッカー文化やオンライン・アクティヴィズムを中心にデジタル・メディア研究を行っている。近刊予定に Coding Freedom: The Aesthetics and the Ethics of Hacking (『自由の符号化:ハッキングの美学と倫理』)。
*グレッグ・ハウシュ(Gregg Housh):元アノニマスの活動家。
字幕翻訳・サイト構成:桜井まり子 校正:大竹秀子