NATOのリビア空爆は米軍のアフリカ進出への布石?

2011/11/1(Tue)
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リビア最高指導者カダフィ氏の死亡をうけNATOのラスムセン事務総長は2011年11月、「民間人への脅威が存在しないことは明らかだ」としてリビア爆撃作戦の終結を宣言しました。カダフィ側の拠点に対する空爆は激化するいっぽうでしたが、「カダフィ氏の出身地シルトへの攻撃は熾烈をきわめ、多数の死者が出た」と政策研究所のフィリス・ベニスは言います。シルト住民のすべてがカダフィ支持者ではありません。ベニスは「NATO軍のリビア爆撃が民間人保護のためだったなどというのは事実に反する。シルトの住民は保護どころか爆撃の対象だった」と言います。

終結宣言と並行するかのように、ソマリアでは沿岸地域を支配するアル・シャバブ武装組織に手を焼く暫定政府が欧米に介入を要請しました 。政府と言っても首都モガディシュの一部を統治するだけのようです。また米アフリカ軍(アフリコム)の拠点がドイツからアフリカに移転する動きもみられます。リビア作戦成功を足がかりにして、NATOおよび米国のアフリカ軍事進出が拡大するおそれがあることをベニスは指摘します。

重要なのは、当初は独裁者を倒すための「アラブの春」として始まったリビアの民衆運動が、欧米の武器供与によって多数の勢力に分裂し、欧米に全面的に依存する国になったことだとベニスは強調します。

リビアの蜂起と同時期に反政府勢力と政府軍が衝突し、以来激化の一途をたどっているシリアに対しては、欧米は介入を行っていません。NATOのリビア介入の目的とは、新たな利権獲得のためのアフリカの再支配ではないでしょうか。(桜井まり子)

*フィリス・ベニス(Phyllis Bennis政策研究所( Institute for Policy Studies)のフェロー。『国連を支配するアメリカ―超大国がつくる世界秩序』やUnderstanding the Palestinian-Israeli Conflict: A Primerなどの著者。

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字幕翻訳:桜井まり子/全体監修:中野真紀子/ウェブ作成:丸山紀一朗