「緑の雇用」のバン・ジョーンズ、パワーシフトを訴える

2011/4/22(Fri)
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8分

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なんとも、パワフル。ワシントンDCで2011年4月に開かれた「パワーシフト2011」会議の基調演説をお届けします。檄をとばしているのは、「環境のヒーロー」バン・ジョーンズ。「現代文明は死が燃料だ。化石燃料とは数億年前に死んだ生物。大地から死を掘り出してエンジンで燃やしている。葬儀もしないで発電所で死を燃やす。死はいまや空から降ってくる。それが、地球温暖化。死体をくべる社会はやめて、太陽など生きたエネルギーを使いましょう」。想像力をかきたてる鮮烈な論法です。

ジョーンズのクリーンエネルギー経済運動は、明らかに公民権運動の流れを汲んでいます。2008年に出版されベストセラーになった著書『グリーン・ニューディール―グリーンカラー・ジョブが環境と経済を救う』の中で、彼は従来の「グリーン運動」は、高学歴で高所得の人のための運動だったことを看破し、運動から落ちこぼれてきた貧困層をも巻き込むことが、真の環境対策になると主張しました。そのために必要なのは、ブルーカラーならぬ環境にやさしいグリーンカラーの雇用を提供すること。そのような仕事を得た人々が、生活の糧を得て家族を養うことができ、環境にとっていいことをしているんだという誇りと自尊心を持つ――それが新しい「グリーンカラー・エコノミー」の実現につながると言うのです。この「パワーシフト2011」の演説でも、「太陽光パネルを金持ちだけが買える贅沢品にし、貧乏人に持たせないでいることはできない。地球にそんな余裕はない」と語り、環境と貧困問題を一挙に解決する方法を示唆しています。

「パワーシフト」会議は、2007年にシエラクラブ、350.org 、WWF(世界保護基金)、NRDG(天然資源防護審議会)など米国の環境団体が連合して始めたイベントで、環境運動に関わる若者たちが一堂に会するサミットです。人口が尻すぼみの日本に比べて、現在、米国の若者は史上最大の世代集団。彼らが動けば、社会は間違いなく変わる。だからこそ、ジョーンズの呼びかけにも力が入ります―「明日のリーダーになろうなんて思っちゃだめ。今日のリーダーになってほしい。キング師は25歳で運動を始めたし、フリーダムライダーの学生たちは19歳か20歳だった」。呼びかけるジョーンズもパワフルなら、姿は見えずとも応える会場の若者たちの声のなんと元気なこと!うん、これなら変われるかも。(大竹秀子)

*バン・ジョーンズ(Van Jones) 人権とクリーンエネルギー経済運動の指導者として国際的に高く評価されている。エラ・ベイカー人権センター(米国の刑事裁判制度における人権侵害を告発)、カラー・オブ・チェンジ、グリーン・フォー・オールなどの共同設立者。2009年、オバマ政権の「緑の雇用」特別顧問に任命されたが、右派の誹謗中傷攻撃にあい、政権を救うため数ヶ月で辞任。著書『グリーン・ニューディール グリーンカラー・ジョブが環境と経済を救う』(東洋経済新報社)はベストセラーとなった。2009年にはタイムズ誌により「環境のヒーロー」として「世界で最も影響力のある100人」に選出された。

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字幕翻訳:小椋優子 校正:大竹秀子 全体監修:中野真紀子 サイト作成:丸山紀一朗