ダルフール殺戮でスーダン大統領にICCの逮捕状 是非をめぐる討論

2009/3/6(Fri)
Video No.: 
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14分

2009年3月4日、国際刑事裁判所(ICC)は、2003年以降続いているスーダン西部のダルフール地方における内戦で行なわれた戦争犯罪と人道に対する罪に責任があるとして、スーダンの現職大統領オマル・バシールに逮捕状を出しました。2005年の国連安全保障理事会による付託を受けてのものです。

しかしスーダンはICC規定の締結国ではなく、バシール氏が拘束される可能性のない時点で逮捕状を発行したことには、様々な観点から賛否両論が提示されています。事実、スーダン政府は決定に反発し、国内で人道支援活動に従事する欧米系の支援団体の多数がスパイ行為を行っていると非難して追放を決定しました。和平への取り組みに関与するアフリカ連合も逮捕状発行に反発しています。

番組では、今回の決定を支持するヒューマン・ライツ・ウォッチ理事でICC設立のために運動を主導したリチャード・ディッカー氏と、ハーバード大学の学際組織人道主義プロジェクトのまとめ役で、今回の決定を「象徴的な動きに過ぎず、却って人道危機を招きかねない、性急な行動」だと批判するアレックス・デ・ウォール氏を招きます。

毎月150人が殺害されるという現状についてバシル大統領の責任については意見が一致しつつも、逮捕状発行に対する評価では対立する二人のゲストの対話の中から、国際刑事法廷が弱小国での犯罪ばかりを熱心に取り上げる一方で、米国やロシアを頂点とする大国やその同盟諸国の犯罪には沈黙を守っている、という矛盾の危うさがあぶり出されます。(斉木)

*アレックス・デ・ウォール(Alex De Waal)
社会科学研究評議会(Social Science Research Council)の企画委員で、ハーバード大学の人道主義プロジェクト(Humanitarian Initiative)の上級研究員、またロンドンの「ジャスティス・アフリカ」の理事。2006年、アフリカ連合によるダルフール紛争の調停で顧問を務める。スーダンに関してDarfur: A New History of a Long War(『ダルフール 長期内戦のなかで生れる新しい歴史』)など複数の著書がある。 参考ブログ Social Science Research Council –Making Sense of Darfur(英文のみ http://blogs.ssrc.org/darfur/

*リチャード・ディッカー(Richard Dicker)
ヒューマン・ライツ・ウォッチの国際司法部門理事。長年にわたり国際司法裁判所設立にむけた運動に取り組んだ。

Credits: 

字幕翻訳:大竹秀子/校正:斉木裕明
全体監修:中野真紀子・高田絵里