巨額の政治献金で公共政策をあやつる石油業界

2010/5/5(Wed)
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14分

今回の原油流出事故について、石油業界による政治介入の視点から『石油専制 ─世界最強の産業との闘い』の著者アントニア・ユハスに聞きます。BPのロビー活動資金を調査してきたユハスは、今回の事故は起こるべくして起こったと言います。BPは製油所の経費を25%も削減して過去最高益を挙げてきました。コスト削減のために悪質な安全管理義務違反を重ねた結果、2005年にテキサス州で作業員15人が亡くなる大事故を起こしました。この企業がふたたび大事故を起こすことは十分に予想できたのです。 こんなことが起こるのは、企業に対する規制が米国では骨抜きになっているからです。ワシントンでは企業の資金力が幅をきかせているのです。そんな中で、世界最大の金持ちである石油業界の力は絶大です。

2009年の世界10代企業のうち7社は石油企業でした。彼らはあり余る富を使ってロビー活動を行い、規制や制限や政府の監督を逃れます。そればかりか深海油田やオイルサンド採掘など、本来は掘るべきでないようなところまで採掘技術の限界を押し広げて、世界中の石油をかき集めようとします。不適切な場所で無理な掘削をしながら、規制はゆるゆるです。

「石油の政府」と言われたブッシュ政権では、業界の意向がそのまま政府の意向だったのでロビー活動などする必要もなかったのですが、オバマ政権のもとではふたたび金にあかせた強引なロビー活動が復活しているとユハスは指摘します。しかも、米国では今や企業の選挙権金に上限がなくなり、政治家の選挙資金にも巨額のオイルマネーが流入するかもしれません。石油業界が米国の公共政策におよぼす影響力は、空恐ろしいものがあるとユハスは指摘します(中野真紀子)

 

ゲスト *アントニア・ユハス(Antonia Juhasz): The Tyranny of Oil: The World’s Most Powerful Industry – And What We Must Do To Stop It (『石油の専制 世界最強の産業とそれを阻止するために私たちがすべきこと』)の著者。グローバルエクスチェンジのシェブロン・プログラム(Chevron Program at Global Exchange)の責任者

Credits: 

字幕:加藤麻子/校正:永井愛弓 全体監修:中野真紀子・付天斉

English Script: 
https://democracynow.jp/sites/default/files/img/video/2010-05-05-3.jpg