閉じゆく自由空間 コムキャストのNBC合併とデジタル時代のメディア独占
今年初め、民主党の2人のベテラン上院議員クリス・ドットとバイロン・ドーガンが中間選挙に出馬しないと発表しました。これで民主党が上院でフィリバスター(議事妨害)を阻止できる60議席の確保が難しくなるだけでなく、オバマ政権のメディア政策にも赤信号が灯ります。 ドーガン議員はメディア統合の進展に危機感をいだき、FCCの規制強化や「ネットの中立性」を先頭に立って訴えてきました。おりしも米国のケーブルTV・ネット接続事業の国内最大手コムキャスト社が、NBCユニバーサル社の買収に動いています。
この合併が認可されれば、テレビ放送とケーブルTVにブロードバンド接続事業も含めた巨大配信ネットワークが誕生し、ユニバーサル・スタジオなどコンテンツまで傘下に収める最強の独占支配体制が実現します。独占事業モデルをネットにも拡大したい巨大メディアの攻勢に、オバマ政権は「ネットの中立性」推進の姿勢を貫けるのでしょうか?この転換期に市民メディアが今なすべきことは?
政府はネットの中立性を法制化する方針ですが、コムキャストNBCの合併で最強独占企業が出現すれば、法制化しても実効性は疑われます。大手企業は新しいメディアを出来るだけ多く支配し、独占モデルに基づいた料金設定でビジネスモデルを構築したい。番組単位の課金方式をネットに移植するためには、ネット上の無料配信を駆逐しなければなりません。そのためのインターネット支配のもくろみが、「どこでもテレビ」というキャッチフレーズの裏にあります。
これに対抗するには、オープンシステムを守る規制強化という政策面の取り組みも必要ですが、それと同時に革新派メディアが生き残りの方策を探り、コンテンツ制作に力を注ぐことが重要だと、ゲストのジェフ・チェスターは言います。まだインターネットが開いている今のうちに人々を教育し、組織化するサービスを開始して既成事実を作らなければなりません。それを怠り、規制の力だけを頼みにすれば10年後には後悔することになるでしょう。 (中野)
*ジェフ・チェスター(Jeff Chester) センター・フォー・デジタルデモクラシー(Center for Digital Democracy)事務局長
字幕翻訳:中村達人/校正:関房江
全体監修:中野真紀子・付天斉