日用品の毒性規制の遅れが米国製品の市場を狭める

2009/2/24(Tue)
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調査ジャーナリストのマーク・シャピロを迎え、おもちゃや化粧品など日常的に使用する製品に含まれる化学物質の人体や環境へ安全性の基準が緩められていることが、米国製品の国際競争力を失わせると論じる最近の著作について語ってもらいます。

米国では化学薬品や工業製品の安全性を守る規制が、企業ロービーの圧力によってどんどん緩和され、有名無実化しています。企業側の主張は、規制を緩和しないと競争力が損なわれるという、おなじみのものです。しかし、本当にそうなのでしょうか?

欧州連合か進めてきた化学薬品の使用に関する画期的な法制改革で、数千もの化学物質の人体や環境への影響が検査され、規制されることになり、米国の産業界が重要なデータの公表をしないですませてきた時代は終わりつつあるようです。裕福なヨーロッパ市場で製品を売るためには、EUの厳格な基準に基づいてすべての毒性成分を排除し、環境にも優しい製品を製造しなければなりません。ヨーロッパの企業は何年も前から新基準に適合する製品を開発してきましたが、米国企業にその蓄積はなく、基準に合わない在庫も抱えています。

それどころか、規制の緩さは米国市場を危険な商品であふれさせることにもつながります。EUでは売ることのできなくなった毒性物質を含むおもちゃや電気製品も、米国でなら売ることができるからです。他の国々から閉め出された不用品の捨て場になり、米国民の安全はさらに脅かされるでしょう。

これに対して米国企業がとった行動は、ワシントンのロビイストをEUにも送り込むことでした。「あらゆる規制はビジネスにとって悪である」という市場万能カルトに取り付かれているかぎり、米国はどんどん取り残されていくでしょう。(中野)

* マーク・シャピロ(Mark Schapiro)Exposed: The Toxic Chemistry of Everyday Products and What’s at Stake for American Power(『毒物づけ 日用品の中の有害物質が米国の力を蝕む』)について話を聞きます。

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字幕翻訳:田中泉/校正:永井愛弓
全体監修:中野真紀子・高田絵里