ナオミ・クライン 金融救済で暴利をむさぼるのは誰?

2008/11/17(Mon)
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11月15-16日ワシントンで開かれた緊急金融サミットには、世界20カ国/地域の首脳が集まり、金融危機や世界不況への対策を話し合いました。先進国が金融市場の十分な監督を怠ったことが、今回の金融危機を引き起こしたという認識が参加国のあいだで共有され、国際金融規制の強化をうたう共同声明が出されました。新興経済諸国の参加により従来のG7の枠を超えた画期的な方針が打ち出されることが期待されていましたが、結果はどうだったのでしょう?

一方米国では、ブッシュ政権が金融機関救済のため7千億ドルを超える公的資金を確保してから1カ月になります。金融サミットの数日前ヘンリー・ポールソン財務長官は、すでに投入が決まっている政府資金2千9百億ドルとは別に、新たな救済措置の必要を訴えました。その骨子は、消費を下支えするためには消費者金融のテコ入れが必要として、ノンバンクへの財政支援を行なうというものです。

オバマ次期大統領の政権移行チームはブッシュ政権の救済措置の運用に抜本的な修正を検討中ですが、新政権の発足は2009年1月20日です、それまでの2カ月の間、ブッシュ政権による野放図な金融救済措置が続きます。議会が義務づけた救済措置監督の独立機関の人事にとりかかる様子はありません。

「詳細が明らかになるにつれ、政府のウォール街救済策は役に立たないどころか、犯罪と紙一重であることが明らかになってきた」と、ベストセラー『ショックドクトリン』の著者ナオミ・クラインは言います。ブッシュ政権下で進められてきた諸政策は、危機的状況を利用して、企業が儲かるだけの民衆に不利な政策を「特効薬」と偽って押し付ける「ショックドクトリン」の典型例として分析してきたクラインは、今回の金融危機の救済策についても鮮やかな切り口で現状を解き明かしてくれます。(中野)

* ナオミ・クライン(Naomi Klein) カナダの有名ジャーナリスト、活動家。2000年に出版した『ブランドなんか、いらない』は、企業中心のグローバリゼーションへの抵抗運動のマニフェストとしてベストセラーになった。昨年9月に出版された話題作The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism (『ショックドクトリン 惨事活用型資本主義の台頭』)は、25カ国語に翻訳されている。

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字幕翻訳: 中野真紀子・中村達人 / 校正;関房江・中野真紀子
全体監修;中野真紀子