ホワイトスペースを開放せよ 電波は誰のもの?

2008/11/4(Tue)
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2008年11月4日、米国では大統領選挙と並んで、もう一つ民主主義にとって重要な投票が行われました。米連邦通信委員会(FCC)が、高速無線インターネット接続を広範囲に広げることになる決定を下しました。テレビ放送用の電波の周波数帯域のうち「ホワイトスペース」と呼ばれる空き部分を開放し、誰でも高速インターネット・サービスに利用できるようにしたのです。

ホワイトスペースとは、テレビの各チャンネルに割り当てられた周波数の間にある未使用の帯域です。アナログ放送の時代には、電波の干渉を防ぐために、チャンネル間にスペースを設けることが必要でした。しかし、デジタル放送への完全移行(米国では2009年2月、日本は2011年7月予定)が行なわれれば、電波の干渉の恐れはほぼなくなるので、この未使用のスペースを高速インターネットや携帯電話に利用することが可能になります。

これにより遠隔地の住民や低所得層も高速インターネットを利用でき、情報格差を縮める事ができます。また巨大なアクセス市場が生まれ、ブッシュ政権下でブロードバンド化が停滞していた米国が、遅れを取り戻す大きなチャンスとなります。しかしFCCがこの決定にいたるまでには、長い時間がかかりました。放送業界が猛反発したのです。

放送業界は過去70年近く、最も便利な周波数帯の利用をただ同然で独占してきました。情報の流通を独占することで大きな影響力も振るってきました。その既得権が脅かされるのであれば、どんな革新にも反対します。FCCは4年もかけて約3万人から意見を聴取し、技術的な検証もした末に、全会一致でホワイトスペースの開放を決定しました。

同じことは、もちろん日本の地デジ移行にも当てはまります。日本における放送電波の利用状況は90%以上が未使用という報告もあります(たとえば、この池田信夫ブログ)。日本の監督官庁は総務省ですが、はたしてFCCの英断に見習うものでしょうか? この問題はテレビ局の利害に大きくかかわることです。この件についてのテレビの報道は(そもそも取り上げられることがあればですが)、慎重に読み取る必要がありそうです。(中野)

★ DVD 2008年度 第3巻 「メディアの現在」に収録

ティモシー・カール(Timothy Karr)メディア改革団体フリープレスのキャンペーン主任、ブログMedia Citizenを運営 MediaCitizen.Blogspot.Com

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字幕翻訳:桜井まり子/校正・全体監修:中野真紀子