イスラエルは聖書の教えとアパルトヘイトの教訓に学べ デズモンド・ツツ

2007/11/27(Tue)
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26分

 南アフリカの反アパルトヘイト運動の精神的指導者であったデズモンド・ツツ元大主教。反アパルトヘイト運動で果たした役割も絶大ですが、その後「真実と和解委員会」の委員長として和解プロセスを成功させたことも、世界史に残る大きな実績だったといえるでしょう。

「被害の詳細を告発する場は保証しよう。でも復讐に走らず許しあおう」という方針を貫いたことは、南アが復讐の連鎖に陥らず、予想されていたような流血の泥沼にはまることなく民主化を遂げることのできた、最大の理由の一つでした。

 そんなツツ師が、イスラエルとパレスチナの問題に関して発言しました。

 2006年に19人のパレスチナ人がガザで殺害された時に、ツツ師は国連調査団を率いてガザに調査に入ろうとした際に、イスラエル政府がその妨害をしたことがありました。そして昨年、ミネソタ州のセント・トーマス大学が、ツツ師がイスラエル政策を批判したことを理由に講演をキャンセルし、米国メディアを賑わせました。学内から猛反発を受けた学長は、ツツ師に謝罪して招待状を送りなおし、ツツ師もそれを受け取りました。

 この講演は、そんな事件後まもなく、パレスチナ系キリスト教団体「サビール」の主催で、ボストンのオールド・サウス教会で行われたもの。どちらかと言えば、米国にたくさんいるユダヤ人たちやイスラエルに呼びかけている内容でした。

 南アフリカのアパルトヘイトで見られたような惨事がイスラエル・パレスチナでも繰り広げられている、という「周知の話」を敢えて省略し、ユダヤ教徒キリスト教の一連性を強調し、「宿敵との交渉」を通じた、思い切った和解を呼びかけています。
「どうかアパルトヘイトの教訓を学んでください」
「アパルトヘイト体制最後のデクラーク大統領は、宿敵と交渉をするという勇敢な決断を下しました。おかげで、ようやく『安全』を手にしたのです。長い間、暴力で宿敵を抑えつけても決して手に入れることのできなかった『安全』を」
「銃は平和をもたらしません。すべての人の願いと人権が公平に認められて、初めて平和が訪れたのです」 (古山)

★ DVD 2007年度 第6巻 「2008年2-3月」に収録

デズモンド・ツツ大主教 (Desmond Tutu) 英国国教会・南アフリカ聖公会の元ケープタウン大主教。南アフリカでの反アパルトヘイト闘争における主要な精神的指導者でした。1984年にはノーベル平和賞を受賞。アパルトヘイト撤廃後、アパルトヘイトの加害者と被害者の和解を目指す「真実と和解委員会」が1995年に設置された時、黒人・カラード・白人すべてから信頼の厚かったツツ大主教が、その委員長を務めました。 現在でも世界各国を巡り平和と正義を訴え続けています。  

Credits: 

翻訳字幕:岩間龍男 / 字幕校正:桜井まり子 
全体監修:古山葉子