『叫べ!愛する気候よ』 エイミー・グッドマン(2011.11.30)
『叫べ!愛する気候よ』 エイミー・グッドマン(2011.11.30)
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第17回締約国会議(COP17)が、今週、南アフリカのダーバンで始まる。が、コデニ・シンバの悲劇的な死を防ぐには遅すぎた。この17歳の少女は、国連会議開幕の前の晩にダーバンで亡くなった10人のうちの1人だ。住民350万人の海辺の町を激しい雨が襲い、洪水で家屋700軒が壊滅した。
シンバが眠っていたすぐ横でコンクリートの壁が崩れ落ちた。ある女性は手足をばたつかせてもがく1歳の赤ん坊を救おうとした。赤ん坊の両親は家の下敷きだった。努力は実を結ばず、赤ん坊は両親ともども息を引き取った。この事件が起きた時、2万人を超える政治家、官僚、ジャーナリスト、科学者、活動家が京都議定書の最後のチャンスかもしれない会議へと向かっていた。
どうすれば、会議はこの死を防げただろう?いや、むしろ、こう問うべきだ。この大洪水は今月、何度も起きた破壊的な大嵐に続いて起きたものだが、これらは人間が引き起こした気候変動とどうつながっており、ダーバンの集会はそれにどう取り組もうとしているのか?11月、ダーバンに降った雨は例年の2倍だった。天候が極端に悪化しているのがこれでもわかる。
「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は、気候変動に関する現在の知識に関し科学的な見方を世界にひろめようと、自発的に活動する科学者数千人の団体で、2007年にノーベル平和賞を受賞した。IPCC は先週、自分たちの発見のまとめを発表し、変動する気候と、飢饉、鉄砲水、ハリケーン、海面の上昇など極端な天候とのつながりを明らかにした。世界気象機関(WMO)が発表した最新の発見によると、2011年は記録史上10番目に気温の高い年であり、北極海の氷の量は、今年、記録史上最小だった。また記録史上もっとも気温が高かった年のうち13年は過去15年間のことだった。
だから、私たちはダーバンに行く。第17回気候変動枠組み条約締約国会議、略称COP17のためだ。これまでに国連の話し合いで生まれためざましい業績のひとつは京都議定書、すなわち、温室ガス排出を制限するための法的な拘束力のある条項を含む国際条約だ。1997年に京都議定書が採択された時、中国は貧しい発展途上国とみなされていたため課された義務は非常に少なかった。いまでは米国など他の国々が、中国は金持ちの先進国と同じ義務を負うべきだと主張する。中国は拒否する。それが京都議定書の更新を妨げている主要な原因のひとつだ。もちろん障害は他にもある。もうひとつの主要な障害は、歴史的にみて世界最大の汚染国である米国が、議定書に調印しながら批准していないことだ。
2009年末のコペンハーゲン会議(COP15)では、バラク・オバマ大統領が乗り込み、招待された人しかはいれない裏取引の会議を開き、自発的な─つまり強制力のない─京都議定書の代案をつくりあげ、大勢の国々の怒りを買った。2010年のメキシコのカンクン会議(COP16)では、京都議定書との距離がきわだった。ダーバンについての支配的な位置づけ方は、国連の気候問題への取り組みは、ここが正念場だということだ。
オバマの力不足をさらに悪くさせているのは、「人為的な気候変動など、でっちあげである」あるいは「そんなものは存在しない」という意見の共和党が、下院の多数派を占めていることだ。共和党の大統領候補者9人中8人の立場がそうだ。石油・ガス企業は年に数千万ドルを費やして、眉唾ものの科学と気候変動否定論者を後押ししている。投資は成果を挙げ、気候変動は問題ではないと信じるアメリカ人の割合が増えている。
国連気候会議への失望と時を一にして、気候正義を求める街頭抗議運動は勢いを増している。地球温暖化を加速する化石燃料への依存に反対する抗議は、ウェストバージニア州で行われている山頂除去法による石炭発掘に反対する非暴力直接行動から、キーストーンXLタールサンド石油パイプラインに反対してホワイトハウス前で逮捕された1200人を超える人々まで幅広い。
だからこそ、南アフリカのダーバンは、市民社会にとって国連のプロセスへの挑戦にぴったりの場所だ。アフリカ大陸は他の大部分の地域よりも気候変動の影響がはなはだしいと予測されているし、大半の住民は、気候変動がもたらす大災害への備えが不足している。十分なインフラもなく、活用できる富の備蓄も欠くためだ。それでもそこには、アパルトヘイトの抑圧的なくびきを打ち破った人達がいる。
南アフリカの小説家アラン・ペイトンは、アパルトヘイト制度が敷かれた最初の年にあたる1948年にそれを打ち倒すための長い闘いを予測し、「叫べ、愛する国よ、こんなことはまだまだ続く」と書いた。同じ決意がダーバンの街頭で勢いを増し、冷房が効いた室内にたてこもったCOP17の会議にはすっかり欠けているシーダーシップを提供している。(翻訳:大竹秀子)
エイミー・グッドマン(協力:デニス・モイニハン)
© 2011 Amy Goodman
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