食糧暴動で揺らぐムバラク体制下のエジプト

2008/4/16(Wed)
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12分

ムバラク政権の長期支配が続くエジプトで、事実上の最大野党はムスリム兄弟団ですが、同国は特定の階級や宗教に基づく政治集団を禁じているため、非合法集団とされています。ことし4月15日にムスリム同胞団のメンバー25人が、軍事法廷による実刑判決で収監されました。同胞団のナンバー2も含まれています。彼らは昨年末から拘禁されていましたが、4月はじめの地方選挙前にも同胞団メンバー数百人が逮捕され、弾圧が強化されています。その背景には、息子に政権を譲るため政敵を極力排除したいムバラク大統領の意図が働いていると言われます。

裏を返せば、長期の独裁政治に不満が鬱積して爆発寸前になっているのです。ここ数年反ムバラクのキファーヤ(もうたくさん)運動が高まってきました。ここへきて食糧危機がそれに重なり、社会不安が高まっています。国際的な食糧価格の高騰のあおりで、庶民の基本食品であるパンや米、パスタ類が店頭から消え、食糧暴動が起きた直後の判決でした。カリフォルニア大学で客員教授をつとめるエジプト人ジャーナリストのホッサム・ハマラーウィに話を聞きます。

ブログを中心に活動するハマラーウィは、エジプトにおけるブログの重要性を説明します。エジプトでは、ブロガーは社会活動家なのだとハマラーウィは言います。この国ではいまだに報道が政府のきびしい検閲のもとに置かれ、独立報道機関にも自由な活動は許されていません。そういう環境でブログが市民の重要な情報源となり、エジプトにはアラブ世界でも有数のブログ文化が発達したのだとハマラーウィは説明します。彼の話から、エジプトの民主化運動の息吹が伝わってきます。(中野)

*ホサム・エル=ハマラ-ウィ(Hossam el-Hamalawy) エジプトのジャーナリスト、ブロガー(arabawy.org)、活動家。出演当時はカリフォルニア大学バークレー校で客員教授。

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字幕翻訳:川上奈緒子
全体監修:中野真紀子・高田絵里