『地球が燃えている』ナオミ・クライン(3)グレタ・トゥーンベリの特異な能力
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ナオミ・クラインが新著『地球が燃えている~気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提言』の発売当日に、デモクラシー・ナウで語りました。日本でも先月(2020年11月)に翻訳版が出たので紹介します。
この放送の2019年9月の時点では、1年後の大統領選挙に向けて民主党では多彩な人々が立候補し、候補者討論会でしのぎを削っていましたが、オカシオ・コルテス議員ら進歩派が推すグリーン・ニューディール(GND)についての各候補の立場は、サンダースやウォーレンを除けばあいまいです。特に、党の中央執行部と彼らが一押しするジョー・バイデン候補はともにGNDに冷淡で、気候対策に的をしぼった候補者討論会の開催も拒んでいます。シングル・イシュー(単一の争点のみに的を絞る)の討論会は開けないというのが理由なのですが、気候危機は他の争点とは位相が違います。地球環境が安全に保たれていることは、すべての問題解決の前提なのですから。もはや、どんな個別の争点も、徹底した温暖化対策との組み合わせでしか成立しないのです。
そんな状況で急いで出版された本書は、政治家にもっと危機感を持ってもらうため、みんなで力を合わせようという気合が感じられます。長編インタビューのうち、パート(1)から(4)までに字幕を付けました。それぞれのパートで、新著で論じられているポイントが紹介されています。
パート3は、グレタ・トゥーンベリについて。気候対策を求める運動に大きな弾みをつけた学校ストライキ「未来のための金曜日」を始めたスウェーデンの少女です。この運動は瞬く間に世界中の子供たちに広がり、2019年3月15日には世界130か国で160万人もが参加しました。自分たちの未来を消さないでほしいと訴える子供たちの声は、親たちの心に強く響きました。
この運動をたった一人で始めたグレタには、ほかの子供たちにはない特別の才能が備わっていました。それは、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)です。物事を白と黒にきっぱり分けて見てしまい社交的なかかわりは苦手となる独特な脳神経の働き方が、こと気候変動に関しては正しく危機をとらえる超能力となったのです。このことは逆に、なぜ普通の人々が理屈では理解していても危機感を抱いて行動することができないのかを示唆します。(中野真紀子)
ナオミ・クライン(Naomi Klein):オンラインサイト『インターセプト』の上級特派員。ラトガーズ大学のメディア、文化、フェミニスト研究のグロリア・スタイナム基金教授。新著は『地球が燃えている~気候崩壊から人類を救うグリーン・ニューディールの提案』On Fire: The (Burning) Case for a Green New Deal
字幕翻訳:福田えみり (2019年学生字幕翻訳コンテスト 特別審査員賞受賞者 上智大学) 監修:中野真紀子