フリント市民は汚染水に高額水道料 ネスレは地下水を無料で汲み上げ
2017学生字幕翻訳コンテスト 課題2:「ミシガンの水戦争」の受賞作です。
2016年2月、水道水の鉛汚染で非常事態のフリント市を現地取材しました。市庁舎の裏では住民たちにペットボトル入りの飲料水が配られています。そこで配られていたネスレの「アイスマウンテン」は、フリントから車でほんの数時間のところにあるメコスタ郡の工場で製造されています。ネスレは毎分218ガロンもの地下水を毎日ミシガン湖に注ぐ帯水層から汲み上げていますが、その水に対しては一銭も払っていません。ネスレは無料で汲み上げた水をボトルにつめて世界中に販売していますが、その一方でフリントの住民は有毒物で汚染された水に米国で一番高い水道料金(おおよそ月に1万円以上!)を支払わされています。緊急措置として住民にネスレのボトル水が配られる光景は、新自由主義経済の矛盾の縮図のようです。フリント市の水道が汚染されることになった経緯は、こちらの動画をご覧ください。
ネスレのボトリング工場のあるメコスタ郡では、過剰な地下水の汲み上げによって周辺の沼沢地が枯れてしまいました。女性の住民グループ「水の保全を求めるミシガン市民の会」がネスレ社を相手取って訴訟を起こしました。会長のペギー・ケイスは、そもそも、みんなの共有資源である水を私物化して売りつけるビジネスはおかしいと言います。
10年に及ぶ訴訟には約100万ドルもの費用がかかりましたが、あらゆる手段で募金活動を行い資金を調達しました。その間に、ネスレ側からスラップ訴訟など様々な嫌がらせも受けましたが、女性たちは屈しませんでした。戦い続けた理由は、子どもや孫たちにのためだそうです。
また、フリントの水道汚染は、財政が困窮した都市に知事が非常事態管理者を送り込むというミシガン州が2011年に制定した州法で当時から懸念されていたことの現実化です。フリントやデトロイトなどグローバル化による国内産業衰退の象徴のような都市が、財政難を理由に民主的な手続きを無視した公共財産売却やサービスの民営化にさらされる問題については、こちらの動画をご覧ください。(中野真紀子)
*ペギー・ケイス(Peggy Case):「水の保全を求めるミシガン市民の会」(president of Michigan Citizens for Water Conservation)の会長
*テリー・スワイア(Terry Swier):「水の保全を求めるミシガン市民の会」の設立所の会長でスポークスパーソン。
*セルマ・マネケ(Glenna Maneke):「水の保全を求めるミシガン市民の会」理事、財務責任者
字幕翻訳:2017年学生字幕コンテスト受賞作
監修:中野真紀子