ハーバード大学で化石燃料からの投資撤退を求める学生や教員が本部ビルを占拠

2015/4/16(Thu)
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学生字幕翻訳コンテスト 課題4:投資撤退運動 気候対策の受賞作品です。

ハーバード大学で、学生や卒業生、教職員などが大学の管理部門が置かれた本部ビルを占拠するという事態が発生しました。化石燃料産業からの投資撤退をめぐる議論を大学側が避けていることに業を煮やしての行動です。

米国では気候変動に危機感を持ち有効な対策を求める運動が若者のあいだに広がっていますが、その主要な戦術の一つが、石油やガスを生産する化石燃料産業への投資をやめよと訴える投資撤退運動です。米国の大学の多くは、寄付金や収益の蓄積した大学基金を株式投資などで運用し、運用益を大学経営にあてています。有名大学になると基金の額も巨大で、何百億ドルもの資金を運用しています。かつて南アフリカのアパルトヘイト体制に反対して有力大学が一致して投資撤退を行い、大きな威力を発揮したことが手本になっています。

環境活動家ビル・マッキベンが創始した団体350.orgなどの熱心な運動により投資撤退は徐々に広がり、2014年にはスタンフォード大学が主要大学の先陣を切って石炭産業から投資を撤退すると発表しました。しかしマッキベンの母校でもある東部の名門校ハーバード大学は投資撤退に否定的で、抗議運動による逮捕者も出ました。

しかし今回の占拠運動では大学当局は静観のかまえで、警官との揉め事も起こっていません。気候変動対策について真剣に議論するのを何としても避けたいためです。気候変動リスクの認識がこれまでになく高まる中、研究機関としては科学的見地から差し迫る危険を訴えながら有効な対策については関知しないという都合のよい姿勢の矛盾が目立ち始めています。ましてや企業利益のために明白な科学的根拠を否定する業界に与するような投資を、どのように弁明するというのか?ただ黙って嵐が過ぎるのを待つしかない、というのが大学側の当面の判断のようです。(中野真紀子)

*タリア・ロスステイン( Talia Rothstein):ハーバード大学2年生。ハーバード当市撤退運動の中心メンバーの一人。本部ビルの封鎖に参加中のところを抜け出して、番組に出演。

*ナオミ・オレスケス(Naomi Oreskes):ハーバード大学地球惑星科学部の客員教授で専門は科学史。2004年の論文「寄稿変動の科学的合意」はアル・ゴアの『不都合な真実』など広く引用された。共著に、 『こうして 世界は終わる』や『世界を騙しつづける科学者たち』がある。

Credits: 

字幕翻訳:田村萌々花(オスロ大学大学院 2年)学生字幕翻訳コンテスト2015受賞作品
監修:中野真紀子