コモーション・ワイアレス ネット接続を皆で共有し、参加型の民主主義を推進しよう

2013/3/5(Tue)
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インターネットと民主主義の関係では心配な話題ばかりが続いていましたが、久びさにネットを民主化推進の手段として使おうという明るい話題です。ネットの監視や検閲への危惧が強まる中、今年のF2C(通信の自由)会議で、ユーザーの無線端末を直接つないだメッシュネットワークでプロバイダを介さずにネット接続を共有する”Commotion Wireless”が米国でリリースされるという報告がありました。エジプト革命の時にムバラク政権が反政府運動を弾圧するためネットを遮断するという暴挙に出ましたが、そのときに海外のネット活動家が迂回手段を提供して民主化運動を支援するという出来事がありました。ommotion Wirelessは、そのときの技術を受け継いでいます。

プロジェクトを推進するオープン・テクノロジー研究所のサーシャ・メインランスは、10年以上前から反グローバリゼーション運動の中でネット共有の技術を開発してきました。彼にとっては何よりも直接民主主義を推進する手段なのです。

この反体制運動から生まれた技術に助成金を出したのが、なんと米国の国務省です。イランやアフガニスタンなど国内の民主化要求を弾圧する独裁政権に対抗するため、反体制派を支援する技術の開発に助成金を出し、エジプトで見事に成果を挙げたというわけです。

勝手に切断されないことに加えて、P2Pのネットワークには接続コストが低くなるというメリットもあります。みなでリソースを分け合うので個別にネット接続の契約をする必要がなくなり、ネットを利用するための敷居が下がります。端的に言って、無料でネット接続ができる。家庭や会社で普通に行われているネットの共有を隣人や地域や都市全体に広げれば、参加型民主主義を盛り上げることができるとメインランスは言います。

これはテレコム業界にとっては痛い話でしょうし、国内にネットワークが広がれば国務省との蜜月もいつまで続くものかわかりませんが、今後が非常に注目される動きです。(中野真紀子)

*サーシャ・メインラス(Sascha Meinrath) ニューアメリカ財団(New America Foundation)のオープン・テクノロジー研究所(Open Technology Institute)所長。

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字幕翻訳:阿野貴史/校正:桜井まり子/全体監修:中野真紀子