生まれ変わるメーデー: オキュパイ運動が労働者や移民運動と共闘

2012/5/1(Tue)
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30分

活動の拠点だった「ズコッティ公園」から閉め出され、長い冬をなんとか生き延びた「ウォール街を占拠」運動。息を吹き返す「場」として選んだのがメーデーでした。ここ数年、「国際労働者の日」メーデーを米国で盛り上げて来たのは、この国で働く権利を渇望する在留資格の無い移民(undocumented immigrants)も含め、低賃金や劣悪な労働条件を強いられる移民労働者たちでした。低賃金もいとわない移民労働者に職を奪われることを恐れる従来の労働組合と移民労働者とは立場が違い、これまで必ずしも良い関係ばかりではありませんでした。ともあれ、いずれも経済格差に怒り苦しむ99%。というわけで今年はこの両者を「占拠」運動がつなぎ、働く皆の抗議と祝日としてメーデーを盛り上げました。

「ウォール街を占拠」運動では、ダントツの取材と切り口で、運動に参加・共感する人々の大きな力となったデモクラシー・ナウ!では、この日も番組の時間一杯を使って特集を組み、「占拠」運動の核心のいくつかにふれる興味深い論争が展開されました。

まず大きなテーマのひとつは、「占拠」運動がめざすもの。運動のはじめから親身になって応援してきた知識人クリス・ヘッジズはフランス革命やアメリカ独立戦争などを引き合いに出し、押し寄せる波のように民衆の力が権力を襲っていく「革命」が始まったのだと評します。これに対して、「占拠」運動の意義を皆な平等な水平な思想に見るマリーナ・シトリンは、「革命」はマルクスが言ったような突進する列車ではないのではないか。ベンヤミンが描いたような「歴史」という走っている列車に乗っている人が一斉に急ブレーキをひいて止めるというイメージもあると、切り返します。まず、皆で止めること。それから、いまとは違うあり方を、皆で話し合って築いていかれるのではと。

運動の形態でも意見はわかれます。論議の的になったのは、黒い服装をして顔をマスクでかくした「ブラックブロック」と呼ばれる人々です。グローバル企業のショーウィンドウを壊すなど、いわゆる「非暴力」路線とは少し違う行動を取ります。ヘッジズは彼らに批判的です。覆面などしたら治安当局がスパイを送りこみやすくなる。わざを騒ぎをおこしたり運動の内部で仲違いをおこしたりろくなことはない。運動に参加している市民を怯えさせる、非暴力運動という戦略を台無しにするそんな一派は運動から排除すべきだとし、「占拠運動のガン」という記事も書きました。実際、逮捕されれば国外追放になりかねない無届け移民たちがデモに参加するメーデーの日には、「占拠」運動も極力注意し移民団体に協力しました。

それでも、パレスチナで闘った体験をもち占拠運動の軸の一人になってきたアミン・フセインは、暴力も含めてすべての選択肢を受け入れ、対話で決めて行くべきだとして運動内部での排除に反対です。シトリンは、それ以前に知識人による外部からの「指図」に反対です。現行のシステムを批判し、これまでとは違うものを作ろうとする運動を、当然、当局はつぶそうとします。それに対抗できるのは、人々が場をもち平等な立場で議論を闘わせること。そうやって強くなっていくこと。運動は、そんな会話をぜひとも必要にしているのだとシトリンは強調します。(大竹秀子)

*クリス・ヘッジズ(Chris Hedges) ネイション・インティチュート上級研究員。元ニューヨークタイムズ紙海外特派員。2002年に同紙のグローバル・テロリズムの報道チームの一員としてピュリッツァー賞を受賞。Death of the Liberal Class and The World as It Is: Dispatches on the Myth of Human Progress(『リベラル階級の死と世界の現状』)他、著書多数。日本語翻訳書に『本当の戦争 すべての人が戦争について知っておくべき437の事柄』、『戦争の甘い誘惑』

*マリーナ・シトリン(Marina Sitrin)ニューヨーク市立大学グローバリゼーション&社会変革研究センターのポスドク・フェロー。Horizontalism: Voices of Popular Power in Argentina (『ホリゾンタリズム アルゼンチンの民衆勢力の声』)の著者。最新著はZuccotti Park Press(ズコッティ公園出版)の「オキュパイ・メディア・パンフレット・シリーズ」の1冊で、共著のOccupying Language(『オキュパイのことば』)

*アミン・フセイン(Amin Husain) Tidal誌の編集者。 Tidal(タイダル)誌編集者。2011年8月の準備段階から会合の主要な進行役のひとりで、ズコッティ公園での初の総会の進行役となった。弁護士の資格をもち、マンハッタンの弁護士事務所で金融機関を顧客に仕事していたが、転職しアーティスト兼アクティビストの道を選んだ。毎週金曜日にニューヨーク証券取引所に抗議運動をしている Plus Brigade の共同設立者。

*テレサ・グチエレス(Teresa Gutierrez)「労働者と移民の権利を求める5.1連合」(May 1st Coalition for Worker and Immigrant Rights)の共同幹事

Credits: 

字幕翻訳:中野真紀子 協力:大竹秀子