エジプトのショック・ドクトリン? ムバラク後の経済危機と混迷の大統領選挙

2012/4/10(Tue)
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エジプトで初めての民主選挙と言われた2012年5月の大統領選は、当初本命とされていた立候補者たちが次々と失格となりました。エジプトの報道でイジー賞を受賞したデモクラシー・ナウ特派員のシャリフ・アブドゥル・クドゥースが混迷するエジプト大統領選を語ります。

失格となった10人のうち、本命視されていたのはオマル・スレイマン、ハイラト・シャーテル、アブ・イスマイルの3人でした。オマル・スレイマンはムバラク大統領の情報長官を20年以上務め、CIA,イスラエルの諜報機関モサドと関係が深かった人物です。スレイマンの失格の理由は、7万を超える署名を集めたものの認証できる署名数が規定に達していなかったというものでした。

ムスリム同胞団から立候補した実業家ハイラト・シャーテルは軍事法廷での有罪宣告を理由に失格。サラフィー派のアブ・イスマイルは母親が米国の市民権をもっていたことが失格の理由でした。呼び声の高かった元IAEA長官エルバラダイはいったん立候補を表明したものの、取り消しています。

エジプトには現在、憲法もなく、2011年秋の選挙で成立した人民議会は最高裁によって解散し、軍最高評議会が任命した暫定内閣しかないという異常事態に陥っています。タハリール広場で蜂起をした人々の要求には、非常事態令の解除や新憲法も入っていました。非常事態令が解除されたのは体制崩壊後1年以上もたつ、大統領選挙の直後の2012年5月31日です。

クドゥースによると憲法制定委員会も裁判所の命令により活動が停止したということです。「エジプトの民主化は宙に浮いています」とクドゥースは言います。(2012.6.16桜井まり子)

*シャリフ・アブドゥル・クドゥース(Sharif Abdel Kouddous):エジプト報道でイジー賞を受賞した独立ジャーナリスト。デモクラシー・ナウ!の特派員でカイロ在住。

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字幕翻訳:齋藤雅子/校正・サイト作成:桜井まり子