企業が海外で関与した人権侵害について米国の裁判所に提訴できるかどうか 最高裁判断へ

2012/2/24(Fri)
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米国最高裁は2012年2月、企業の責任についての口頭審理を行いました。ナイジェリアの軍事政権によって1995年に死刑になったナイジェリアの活動家たちの遺族が米国で起こしていた裁判に関する審理です。遺族は1789年の米国法「外国人不法行為請求権法」(Alien Tort Claims Act)に基づいて、石油企業に対する損害賠償訴訟を米国の裁判所で起こしました。外国人不法行為請求権法とは、米国外で行われた国際法違反行為について、外国人が、民事訴訟を米国の地方裁判所に起こすことができるとする法律です。 制定後約200年間、適用されませんでしたが、1980年のFilártiga判決をきっかけに、外国人による国際法違反に対する損害賠償訴訟に使われたことで注目され、この法律に関する議論が続けられてきました。

これと比較されるのが、企業は憲法修正第一条に基づき無制限に政治献金を行うことができるとしたシチズンズ・ユナイテッド最高裁判決です。シチズンズ判決は、企業に人格を認めた過去の判例に基づき、企業に言論の自由があるとしました。合衆国憲法修正第14条は法人にも米国市民の身分を与えていますが、これに基づいて1886年、最高裁が「法人は自然人(natural persons)と同等の憲法上の権利がある」という判決(Santa Clara County v. Southern Pacific Railroad)を下しています。そこで人権派の法律家は、これらの判決を援用し、外国人不法行為請求権法で訴えられる不法行為者は、企業であっても人間と同様の責任を負うべきだと主張します。企業に人としての権利が保障されるのなら法的責任も負うべきだとするアースライツ・インターナショナルの法務部長マルコ・サイモンズをお聞きください。(桜井まり子)

マルコ・サイモンズ(Marco Simons):アースライツ・インターナショナルの法務部長。アースライツ・インターナショナルは外国人不法行為請求権法に基づき、ビルマやナイジェリアにおける企業の人権侵害を追及してきた。

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字幕翻訳:natsu 校正:桜井まり子