米大統領の判断で米国市民の無期限勾留が可能に?

2011/12/22(Thu)
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米国の国防権限法(NDAA)は国防プログラムと年次予算の大枠を定める法律で毎年改訂されます。かつては「国防授権法」と訳されていましたが、全権委任するものではありません。2012年度の米国防権限法は、日本では在沖縄米海兵隊のグアム移転費が全額削除されたことで大きく報道されましたが、この法案には米国国民にとって大きな問題となる条項 が入っていました。9.11事件の犯人を捕獲する目的で2001年に両院可決された「テロリストに対する軍事行使権限付与決議」(Authorization for Use of Military Force Against Terrorists:AUMF) を拡大解釈して、大統領はテロ組織に関与していると判断した人物を、裁判手続きなしで無期限に拘束できる権限があると書かれていたからです。

米国市民と合法的な米国在住者は拘束対象から除外されましたが、そこには但し書きがあり、国家の安全保障の利益を損なう恐れがあると国防長官が議会に対して説明すれば、拘束可能とされました。ニック・バウマン記者は、FBIは以前から「代理拘置」と呼ばれる制度でこのような勾留を海外で行ってきたと指摘します。NDAA法案には、それを米軍が拡大して行うことを認める文言が入っています。

国防権限法(NDAA)が大統領に与える権限は、軍事行使権限決議(AUMF)を超えないと記されています。しかしAUMFが対象としているのは、9.11の犯人および荷担者に特定されています。しかし、その後アルカイダを名乗る勢力はアラビア半島など世界各地に広がり、AUMFが想定していない事態が出現しています。それを補うため、2012年度の国防授権法は、勾留対象の定義を「アルカイダ、タリバン、その関連勢力のメンバーおよび協力者であると大統領が判断する者」と広げています。しかし行政府による一方的な解釈の拡大をNDAAによって法制化することは、三権分立を損なう重大な越権行為だとバウマンは指摘します。

2012年度国防権限法は2011年12月31日、オバマ大統領の署名声明入りで成立しました。(桜井まり子&中野真紀子)

*ニック・バウマン(Nick Baumann) 国家安全保障に関するマザー・ジョーンズ誌記者

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字幕翻訳:natsu/校正:永井愛弓/サイト構成:桜井まり子