すべての人のためのニュース:米国メディアと人種の相関

2011/10/13(Thu)
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43.5分

デモクラシーナウの共同司会者フアン・ゴンザレスが、数年間にわたる調査を経てメディアに関する画期的な新著を共著で刊行しました。News For All the People: The Epic Story of Race and the American Media(『すべての人々のためのニュース 人種と米国メディアのかかわりについての壮大な歴史物語』)は、米国における人種偏見の持続にメディアが中心的な役割を果たしてきたことを検証します。 白人所有のメディアにはびこる悪質な人種差別に挑戦した黒人、ラティーノ、アメリカ先住民、アジア系アメリカ 人など非白人の先駆的なジャーナリストたちの生涯という、これまでほとんど語られることのなかった歴史を掘り起こします。

また、インターネットの覇権をめぐる近年の争いが、じつはメディアとそれをとどける伝達技術が民主主義の国ではたす役割をめぐって何世紀も続いてきた論争の新たな一章にすぎないのだという、今までになかった切り口の説明も行われています。今日は著者の二人をゲストに招き、時間いっぱい、お話をききます。

米国のメディアの歴史を通じて、くりかえし浮上する根本的な問いかけがあることを、彼らは発見しました。「わが国に必要なのは、ニュースや情報を中央で集約するシステムなのか、それとも分権化された自律的なシステムなのか?どちらが民主主義により貢献するのか?」 ゴンザレスによれば、政府が分権型の制度を選んだ時期には民主主義も拡大し、マイノリティの声が聞かれる機会が増え、マイノリティが自ら所有するメディアの設立も盛んになりました。一方、ニュースや情報の中央集権化が強まった時代には、反体制の主張やマイノリティの声、社会的な弱者の存在がメディアからはじき出されます。

人種の差異があまり問題にならない日本でも、多様な声が報道メディアに反映されることは重要です。むしろ国民の均質性が高く、同一方向になびきがちな国がらだからこそ、息苦しいまでのメディアの画一化に警戒が必要かも。異なる声の響き合いの中からこそ、良きものが生まれるように思います。(中野真紀子)

*フアン・ゴンザレス(Juan Gonzalez) デモクラシー・ナウ!の共同司会者でニューヨーク・デイリーニューズ紙のコラムニスト、全国ヒスパニック・ジャーナリスト協会の元会長、多数のジャーナリスト賞を受賞。 最新著はHarvest of Empire: A History of Latinos in America(『帝国の収穫: 米国のラティーノの歴史』)。
*ジョセフ・トレス(Joseph Torres) メディア改革の全国組織フリープレスの政府および渉外担当の上級顧問。全国ヒスパニック・ジャーナリスト協会の元副会長。

Credits: 

字幕翻訳:川添峡子(前半),桜井まり子(後半)/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗