映画『グラニート』が描くグアテマラ集団虐殺に裁きを求める闘い

2011/9/15(Thu)
Video No.: 
3
16.5分

オットー・ペレス・モリーナ大統領をはじめ現在のグアテマラ政界で表舞台に立つ人々と、この国の暗い過去を結びつける新作ドキュメンタリー映画が完成しました。Granito: How to Nail a Dictator(『グラニート 独裁者を追え』)は、グアテマラ軍が民兵組織を使って20万人以上の国民を拷問し殺害した1980年代の大量殺戮の責任を問うため、40年にわたって証拠を拾い集めている人々の姿を追います。集団虐殺に対する法の裁きを求めるマヤ先住民の運動を記録に収め、大統領選でペレス・モリーナの対抗馬だったグアテマラ先住民活動家でノーベル平和賞受賞者のリゴベルタ・メンチュウにスポットをあてています。

グアテマラの集団虐殺に関する証拠の探求についての映像は、ほとんどの部分がパメラ・イェイツ監督が1982年のドキュメンタリー映画Whenthe Mountains Tremble(『山が揺れる時』)のために撮った素材です。30年を経た今になって2番目の映画を作ることになったのは、スペイン法廷に提訴されたグアテマラ虐殺をめぐる国際訴訟のために未使用映像の検証を依頼されたことがきっかけでした。スペインでこのような裁判が開かれるのは、ジェノサイドや人道に対する罪に適用される「普遍的管轄権」の原則によるもので、こうした犯罪の容疑者がたとえ当事国では訴追を免れていてもジェノサイド条約の批准国であればどこの国でも訴追できるのです。スペインで起訴されたことに刺激を受け、グアテマラでも虐殺事件の追及が以前よりは活発になり、中南米諸国では初めて軍の幹部が大量虐殺の容疑で逮捕されたりしました。

しかし、せっかくの司法の大転換も、犯罪の当事者であるペレス・モリーナが大統領に選出されたことで後退することが懸念されます。グアテマラで集団埋葬された身元不明の遺体の発掘調査をしているフレディ・ぺチェレリは、内戦中の組織犯罪を不問にしていることが、権力者は何をやっても処罰されないという考えを蔓延させ、現在の麻薬組織による暴力の横行と人権蹂躙につながっていると警告しています。(中野真紀子)

*パメラ・イェイツ(Pamela Yates) 映画Granito: How to Nail a Dictator (『グラニート 独裁者を追え』)の監督。
*フレディ・ペチェレリ(Fredy Peccerelli) グアテマラ法医人類学基金の所長。

Credits: 

字幕翻訳:斉木裕明/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗