ギリシャとイギリスで数十万規模のストライキ 大胆な歳出削減と緊縮政策に抗議

2011/7/1(Fri)
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2011年夏、英国では公共セクター職員75万人強が政府の推進する年金制度改革案に反対して24時間ストを決行しました。この年金制度改革は、財政赤字削減のため公務員年金の支給開始年齢を引き上げ、年金積立金を増額する一方、受給額は減少させるものです。労組側は、銀行が引き起こした経済・財政ききのツケを労働者に回すのはお門違いだと反発しています。英国全土の学校の3分の2がストで休校になり、学生も抗議行動に合流しています。

緊縮財政に対する抗議行動はヨーロッパ各地に広がっており、ギリシャでも数千人の労働者が48時間のストを行っています。ユーロ圏初のデフォルト(国家債務不履行)を避けるためのEUによる救済措置の条件として、歳出削減や増税や民営化などの緊縮措置をとることを議会が承認したためです。しかし国民は身に覚えのない借金の尻拭いのために年金や安定した職場をあきらめるのは御免だと抗議しています。

ギリシャのデモはウォール街占拠運動やアイスランドのデモと同じです。EUによる救済措置というのは、ギリシャ国債を保有している外国の銀行を救済するためのものであって、ギリシャ国民を救済するものではありません。国民の知らないところで作られた国家債務ですから、国民には返済義務などないと彼らは考えます。でも、政府や政治家たちは国民などそっちのけで債務履行のために国際金融機関と手打ちをしてしまい、国民には自分たちの意思をくみ上げる民主的な選択肢が提供されていない。こうした民主主義の形骸化と無力化に対して、抗議の運動が欧州にも広がっているのです。(中野真紀子)

*ポール・メイソン(Paul Mason)BBCの番組Newsnightの経済エディター。 Meltdown: The End of the Age of Greed (『メルトダウン:貪欲の時代の終わり』)、Live Working or Die Fighting: How the Working Class Went Global(『働いて生きるか闘って死ぬか グローバル化する労働者階級』)などの著書がある。
*デイビッド・グレイバー(David Graeber)ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジで文化人類学を教える。新著はDebt: The First 5,000 Years (『負債 最初の5千年』)(Melville House)。ニューヨークのウォール街占拠運動の仕掛け人の一人

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字幕翻訳:大竹秀子/全体監修:中野真紀子/サイト作成:丸山紀一朗