石油収入で潤うリビアには、さまざまな国から数百万ともいわれる外国人労働者が集まります。3月初め、紛争が激化するリビアから脱出しようともがく外国人労働者たちに、アンジャリ・カマトが取材しました。ベンガジの港には2週間で数万人の外国人労働者が押し寄せました。特にソマリアやエチオピアなど貧しく戦乱で荒廃した国々からきた人々には、自国政府の救援はもちろん安全な避難所もなく、リビア国内で急速に高まるアフリカ系移民に対する暴力におびえています。
アフリカ系移民への反感をあおったのは、カダフィ側の軍勢にはサハラ以南のアフリカからやってきた傭兵が多数使われていると報道されたためです。特に欧米の有名報道機関の記者たちは、アフリカ人傭兵が暴走し、レイプしまくっていると現場の調査もせずに無責任なデマを撒き散らしていると、ヒューマンライツ・ウォッチは言います。ただしカダフィはアフリカ各地で反政府勢力を支援し武器や資金を与え軍事訓練もほどこしてきたので、国内にもそうした外人兵が多かったのも事実です。この人々が東部の反乱鎮圧に差し向けられた可能性はあります。
民主化要求から始まった反政府運動でありながら、急速に軍事化し国際社会の思惑も絡んで長期化しているリビアの紛争は、労働力の大半を外国人が担うという中東の産油国によく見られるような社会構造と、北アフリカのアラブ社会に内在するブラック・アフリカへの偏見を浮き彫りにしています。(中野真紀子)